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鹿児島県、まるごとジオミュージアム(博物館)の勧め

2016.7.15
執筆者:萩原 誠(ハギワラマコト)

 

 鹿児島県には鹿児島にしかない46億年の地球の歴史が生み出したジオ(地球、大地)遺産がある。ほとんどが火山にまつわるものだ。まず活火山の数である。日本に108ある活火山のうち、実に11が鹿児島県にある。中でも特筆すべきは3つの海底カルデラ群(大規模火山噴火の陥没地形)である(図、参照)。もう一つは日本一活動の活発な火山、桜島が人口60万人の鹿児島市のわずか5kmに位置していることだ。火山災害のリスクは大きい。

カルデラ

 

 火山や恐竜の化石、岩石や地層、断層などの地球が生み出した自然遺産を学ぶ公園を「ジオパーク」(大地の公園)といい、ユネスコが「世界ジオパーク」として認定している。国内では2009年に設立された日本ジオパークネットワーク(JGN)が「日本ジオパーク」として審査・認定し、さらに一定の基準を満たした「日本ジオパーク」を「世界ジオパーク」に推薦する仕組みになっている。

 鹿児島県内の「日本ジオパーク」は霧島ジオパーク(2010~)、桜島・錦江湾ジオパーク(2013~)、三島村・鬼界カルデラジオパーク(2015~)の三つがある。北海道の4か所に次いで日本で二番目に多い。しかし“ジオパークとは何か”や鹿児島県にジオパークが3か所もあることを子供たちから大人までの県民のどれほどが認識しているだろうか。

 ジオパークは持続可能な地球(地域)を考える大事な学習の場である。観光集客に偏りがちなジオパーク推進に警鐘を鳴らすのが南日本新聞都城支局の野村真子記者だ。霧島ジオパークが世界ジオパークへの推薦を見送られた背景を次のように指摘している。

 「霧島の最大の魅力は、多くの火山によって生み出された絶景。しかし『ジオパーク』という概念が(地域に)十分に広まっていない中で世界を目指すことに違和感をぬぐえないでいる。(中略)(霧島)単独にせよ、近隣地域と連携するにせよ、多く人の参加が、霧島の魅力に深みを加えるはずだ。ジオパークを直訳すると「大地の公園」。一足飛びに高みを目指すより、地に足をつけて着実に歩む方がふさわしい」(16.6.6付け)※( )は筆者

 世界ジオパークに認定されている四国の室戸ジオパーク協議会の柴田伊廣さん(現文化庁文化財部)は、「ジオパークとは『ぼくたち地球に生きている』を伝え、ジオツアーを体験した人たちが、自分の生き方や地球の未来を変えるきっかけになる場所」だという。正鵠を得ている。

岩松写真

(写真 岩松暉先生)

 国内には「日本ジオパーク」が39か所、うち「世界ジオパーク」が8か所(北海道、洞爺湖有珠山・アポイ岳、新潟県糸魚川、島根県隠岐、兵庫県・京都府山陰海岸、高知県室戸、長崎県島原半島、熊本県阿蘇)ある。これらのジオパーク(大地の公園)をめぐるジオツアーが、柴田さんが指摘する理念や体制になっているかが問題だ。

 日本ジオパーク協議会(JGN)の活動は2007年に立ち上げられたものでそんなに古くない。その日本のジオパークの提唱者が鹿児島に居ることをご存じだろうか。岩松暉鹿児島大学名誉教授(元理学部教授)である。火山県・鹿児島の「地域おこし」とジオパークについて聞いた。

 

 

 

―日本列島を地球規模で見れば

「5年前の東北大震災や今年の熊本地震のように日本列島はいま、1000年ぶりの活動期に入っています。日本は世界でもまれな地殻変動(プレートの衝突)の激しい位置にあり、周辺を海に囲まれ偏西風や海流の影響を年中受けています。その結果、豊かな自然に恵まれていると同時に、火山噴火、地震、津波、台風、豪雨、洪水、土砂崩れなど自然災害の多い国なのです。防災の重要性が国民にもっとも認識されなければいけません。東日本大震災では、自分の住む地域(地球)の成り立ちを知っていたかどうかが生死を分けることを、多くの日本人が気付かされました。しかし5年経って、その認識が早くも風化し始めているのではないでしょうか」

 

―ジオパークは地域活性化に繋がりますか

「ジオパークは2015年にユネスコの正式の事業になりました。ユネスコは、ジオパークの目的として、大地の遺産を保全すること、大地の遺産を教育に役立てること、大地の遺産を学ぶツーリズムを推進すること、の3つを掲げています」

 

―ジオパークの“地域おこし”で注意すべきことは

「ジオパークは確固たる持続可能な運営組織が地元にあるかどうかが重要です。ジオパークは単なる地学の普及でもなく、観光振興の道具でもないのです。民間主導で運営することが重要で、行政や大学を巻き込んで、地域を元気にし、心優しい子供たちを育てていく実験事業ともいうべきものなのです」

 

―大正3年(1914)の桜島大爆発から100周年だった2014年に「火山博物館の設置」を提案されましたが、その趣旨は

「まず多くの(主として鹿児島の)社会人に対する防災啓発の拠点にしたいと思ったからです。桜島の島民以外はまだまだ他人事の意識が強いと思います。同じくらい重要なのが県内の子供たちに対する理科教育と防災教育、そして自然と人間の共生を学ばせる役割です。もう一つは地域起こしに繋がる鹿児島県内のジオパークやジオサイト(地域)の学術的なバックアップの役割です。残念ながらこの提案は実現しませんでした」

 

―ところで鹿児島県内で、「日本ジオパーク」として認定されていなくても、ジオ(遺産)の多い自治体はありますか

「指宿市は市域の全体が10万5千年前の阿多噴火によって形成された阿多カルデラの火口内にあります。その後の火山の噴火によってできた山川港、池田湖、開聞岳など“指宿はまるごとジオパーク”と言ってもいいと思います。そのほか薩摩川内市の甑島は隆起地形が作り出した景観が素晴らしい箇所が島全体にありますし、恐竜の化石も発掘されています。ほかにはアンモナイトや首長竜の化石が発掘される長島町の獅子島、おととしの突然の爆発で全国的に有名になった屋久島町の口永良部島、大小さまざまな鍾乳洞がある沖永良部島などが、ジオツアーの対象になると思います」

 

―世界一の金の含有量を誇る伊佐市の菱刈金山は火山の恵みなのですか

「鹿児島大学研究博物館には日本全国の金鉱山の累積採掘量のジオラマがあります。ダントツの金採掘NO1が伊佐市の住友金属鉱山の菱刈事業所です。世界一の金の含有量を誇っていて、昭和60年(1985)年から採掘がはじまったのですが、これまでの産出量は200トンを超えており、すでに閉山された佐渡金山の江戸時代からの総採掘量80トンの3倍にも達しています。金鉱石は火山活動に密接にかかわって形成されることが多いので、火山地形の多い鹿児島は全県に金が産出される場所があります。ですから国内の金鉱山の過去の金採掘量のベスト10のうち4つ(菱刈、串木野、山ケ野、大口)が鹿児島県にあります。もっとも菱刈鉱山以外は商用ベースに乗らないので、全て閉山されています」

 

【筆者からの直言・提言】

 鹿児島県民の子供たちから大人まで、鹿児島のジオの歴史と現状を正しく認識し、地学リテラシーのレベルを上げる。その県民のジオの知識を基盤にした「ジオツアー」を鹿児島県の交流人口の拡大につなげる。そのために以下の三つの提言をする。

 

1.「鹿児島まるごとジオパーク」を県内で共有化し、県内に、全国に、世界に発信する

 日本一の活火山の多さと世界一の海底カルデラ群(姶良カルデラ、阿多カルデラ、鬼界カルデラ)を売りにして、県が音頭をとって、関係の自治体が連携して、鹿児島のジオ(地球の遺産)をアピールして行くべきだ。現在のジオパーク活動は霧島市、鹿児島市、三島村が、それぞれバラバラに活動している。県内や県外から学習や観光のために訪問する人の立場に立った、「鹿児島県全体がジオパーク!」という認識の県民の共有化が不可欠である。県内のすべての自治体が、地元のジオ遺産を再確認して、「日本ジオパーク」に認定されている2市、1村とともに鹿児島のジオ資産を全国に、世界に売り込む発想が必要だ。

 

2.鹿児島ジオシティ(タウン)・ネットワークを設立する

 県内3つの「日本ジオパーク」以外に、県内にはジオ遺産をアピールできる地域が、散らばっている。沖永良部の鍾乳洞群、全県に散在する金鉱山群、白亜紀化石が多産する獅子島など、鹿児島県はジオの魅力満点である。そのジオ資産を活用し、地域活性化や地域再生につなげる鹿児島県の戦略戦術を立案推進するためのジオシティ(タウン)・ネットワーク(協議会)を早急に設置すべきである。ジオに関連する現状の展示施設は鹿児島市の「県立博物館」、鹿児島大学の「総合研究博物館」、桜島の「桜島ビジターセンター」くらいである。鹿児島県立博物館と鹿児島大学総合研究博物館が音頭をとって鹿児島ジオネットワークを早急に立ち上げてもらいたい。

 

3.鹿児島まるごとジオミュージアムのハブとしての「(火山に重点を置いた)鹿児島ジオミュージアム(博物館)」を(10年後に)設置する 

 今後、10年くらいのスパンで「自然の恵みと自然の災害、そして人間との共生」をテーマとしたジオ博物館の設置を計画する。県民は無論の事、全国から、アジアから、鹿児島ジオツアーの拠点(ハブ)として、評価されるレベルの博物館(展示規模と内容)にする。予算規模は100億円くらいか?もっとも県有地や私有地を利用できれば、100億以下に抑えられる。(最新の展示技術を駆使する)展示の目玉は世界唯一の海底カルデラ群と日本一の活火山群である。参考になるのはジオに重点を置いた「神奈川県立生命の星・地球博物館」である。「日本ジオパーク」に認定されている「箱根」の麓にあり、地球の歴史と成り立ちが誰にでもわかるような展示がなされている。21年前に設置され、ジオに重点を置いた博物館としては日本一だ。隣接して神奈川県立の温泉地学研究所が設置されており、大涌谷など活火山箱根の活動をリアルタイムに観測している。

 

※興味のある方は「地球の履歴書」(大河内直彦/新潮新書/2015)をお読みください。

萩原 誠(ハギワラマコト)

萩原 誠(ハギワラマコト)

マーケティングアドバイザー(広報、マーケティング、リスクマネジメント)
本籍地は鹿児島県いちき串木野市。京大法学部卒。
帝人株式会社(マーケティング部長、広報部長)に勤務後、日本原子学会倫理委員、山形大学地域共同センター大田リエゾンアドバイザー、佐賀大学東京オフィス参与、静岡県東京事務所広報アドバイザー、東北経済産業局東北ものづくりコリドークラスターマネージャー、鹿屋体育大学広報戦略アドバイザーなどを歴任。2007年度は、南日本新聞の客員論説委員として鹿児島県に対する多くの提言を執筆。
現在は、経営倫理実践研究センター主任研究員として活躍する傍ら、日本経営倫理学会に所属。著書に「広報力が会社を救う」(毎日新聞社)、「会社を救う広報とは何か」(彩流社)、「地域と大学」(南方新社)がある。

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