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時論・創論 産業経済

上海研修を「再」検証する(2)

2014.7.18
執筆者:上原 智之(ウエハラトモユキ)

 

■上海路線の開設による経済効果はあったのか

 上海路線の開設は、本県に経済効果をもたらしたのか。

 前回の記事で指摘したように、経済効果の評価検証には2つの切り口があり、1つは「中国との輸出入額の変化」であり、もう一つは「中国人観光客数の変化」である。

 しかしながら、現実をみると、本県の中国との輸出入額は大きく変化していない。また、本県における中国人観光客数は若干増えてはいるが、これは上海路線開設の影響ではなく、クルーズ船の寄港が増えたことによるためである。

 いずれにしてもと、上海路線の開設による経済効果は極めて小さく上海路線の維持のために約1億円を遣おうとした政策は、政策手段がどうだったかは別として、「上海路線の維持」という政策の目的が正しかったのか大いに疑問が残るのである。

 

■中国との経済交流を促進するために必要な取り組み①(ビジネス機会の拡充)

 上海路線の開設が中国との経済交流の促進には必ずしもつながっていないという事実は避けがたいものである。一方で、近年は鈍化傾向にあるとは言え依然高い水準での経済成長をとげている中国との関係において、観光を含めた経済交流の促進は本県の発展に大きく寄与することは多くの県民が理解、納得するものと思われる。

 では、航路開設に代わってどのような取り組みが必要なのか。

 海外との経済交流を促進させるためのポイントは「人の交流促進」、「物流体制の強化」、「戦略物資の選定」の3つがあげられる。

 「人の交流」というとすぐに文化交流とか青少年交流などがあげられるが、ここで重要なのは「経済交流の意図を持ったヒトの交流」である。例えば、本県でも鹿児島相互信用金庫が長年の間実施している大連市での商談会がある。県内企業と中国企業との橋渡しをする機会を提供することにより、中国との経済交流につながっている。

 県等の行政が主体となって同様の取り組みを衣進めるのも良いが、こうした民間が実施し、効果をあげている取り組みを行政が支援、サポートし、県内企業のビジネスチャンスの拡大につなげていくことがより効果を発揮すると思われる。

 

■中国との経済交流を促進するために必要な取り組み②(物流機能の強化)

 第2点は物流機能の強化である。

 輸出入に物流は欠かせない。現在中国との定期的な航路を持っていない鹿児島と中国との物流体制はいかにも脆弱である。物流体制がある程度整備されないことには、いくら人の交流が盛んになっても、経済交流の促進には限界がある。

 輸出産業を代表する自動車産業の立地状況をみてもわかるが、生産工場が立地している場所には必ずと言っていいほど近接する地域に主要港湾を持っており、定期的な航路が存在している。生産活動と物流機能は切っても切り離せない関係にある。

 海外との経済交流を進めるためには、「モノの流れ」を円滑に進めるための諸施策が不可欠である。さらに言えば、港湾等のハード整備ではなく、航路の確保や港湾業務の体制確立など、ソフト面での取り組みを充実強化することが、経済交流促進のための第一歩となる。

 

■中国との経済交流を促進するために必要な取り組み③(戦略物資の明確化)

 最後に重要な鍵となるのは、輸出のための戦略物資を明確にすることである。

 大消費地を抱えていない鹿児島県においては、輸入を主体とした物流機能の強化はきわめて難しい。輸出産業を育成しなければ、経済交流は進まない。

 本県のモノづくりをみると、食品・飲料関連および電子部品関連が主体である。特に、食品・飲料が本県からの輸出を担う戦略物資となりうるのは間違いない。中産階級が急増し、消費水準があがってきている中国においては、高い品質レベルを誇る鹿児島県の食品・飲料は中国市場で大いに飛躍できる可能性を持っている。中でも、焼酎、肉および肉製品、水産物などは、様々な規制により中国への輸出が困難な農産物とは違い、すぐにも輸出拡大が可能な商品である。これらの商品を戦略物資を定め、関連企業や関連団体等への支援を進めていくことこそが輸出促進につながるものでぁる。

 

■行政は民間のサポート役に

 いずれにしても、経済交流を促進するためには、行政が主体となるのではなく、民間が主体にならなければならない。そのためには、行政が主体となる施策ではなく、民間の取り組みをサポートすることに施策を集中することが重要である。

 言い古された言い方ではあるが「官から民へ」を念頭においた施策を展開することが、経済交流を成功させる鍵となるのは間違いない。

上原 智之(ウエハラトモユキ)

上原 智之(ウエハラトモユキ)

昭和62年3月、早稲田大学法学部卒業。同年4月、山一證券株式会社に入社。平成2年3月同社を退社し、平成3年5月、株式会社鹿児島総合研究所(当時はMBC総合研究所)に入社。平成12年から政策研究部長として、同社の政策立案、調査研究・コンサルティング業務に従事。平成17年3月に鹿児島総合研究所を退社し、同年5月有限会社リサーチ&コンサルティング鹿児島を設立。
※平成27年1月6日、急逝いたしました。

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