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上海研修を「再」検証する(1)

2013.12.18
執筆者:上原 智之(ウエハラトモユキ)

■「税金の無駄遣いだから上海研修には反対」の論調は大いに疑問

 今年9月に、県職員の上海研修が大きな話題になった。県民による反対の署名活動が行われ、新聞等のマスメディアも「税金の無駄遣いだからダメ」という論調一辺倒であった。

 しかし、こうした活動や論調には大いに疑問が残る。

 今回の研修について言えば、研修に送るのが公務員だからダメで、民間人なら良かったのか。県議会議員は月30万円の政務調査費があり、本来これは政策立案のための調査研究にあてるのが筋であるにもかかわらず、別の予算で毎年数百万円を遣い年数回の視察研修を実施している。こうした議員の視察研修に予算をつぎ込み続けていいのか。

 こうした状況を踏まえると、今回の研修事業について「県職員が遣うから税金の無駄遣い」という短絡的な批判は、県民のフラストレーションのはけ口としての「行政批判」,「官僚バッシング」と言えなくもない。

 

■県民の批判を助長した偏向的な報道姿勢

 さらに問題なのは、研修の第1陣が派遣された際の報道である。

 南日本新聞は、7月12日の1面記事で、市場での視察が「わずか10分で終了」したと報道し、あたかも県の準備不足によりまともな研修ができなかったという印象を読者に与えていた。

 しかし、この報道は大きな間違いである。実際は、県内の民間放送局が視察の現場である市場にカメラを持ち込もうとしたが、そのことが許可されず、ごたごたした末に県の視察研修もキャンセル同然になったというのが事実のようである。

 こうした状況を知っておきながら、いかにも県が失態を犯したような報道は、「意図的な誤報」とでも言わざるをえない。批判的な報道を進めるために、都合の良い情報だけを伝えるのは、いかにも感情的、情緒的な批判であり、問題の本質からはかけ離れた批判でしかない。

 

■上海研修問題の本質

 では、上海研修を実施したことは正しいのか。それはまったく別問題である。

 上海研修を実施した目的は「上海路線の維持」であったのは間違いない。上海路線の維持が目的であり、そのために考えられる手段の一つとして、県職員の研修を通して搭乗率をあげるという政策がとられたのである。今回はその政策手段について批判が集まったのである。

 一方、政策を推進するにあたっては、常に「政策の目的」があり、その実現に向けた「政策の手段」がある。政策の目的に応じて多様な政策手段が考えられ、その中から適切な政策手段が選択され実施されるのが正しい姿である。そうした点からは、政策を評価する場合、「政策の目的」が適正かを第一に評価するべきであり、それが適正であると判断されれば、手段としての政策そのものを評価するのが正しいステップである。

 今回の上海研修の例をとれば、上海研修という政策をきちんと評価するためには、政策の目的である「上海航路を維持する必要があるかどうか」が第一に検証されるべきであり、次いでその目的を実現するための政策として「県職員による上海研修」が適しているのかどうかを検証することが必要なのである。

 すなわち、県職員の研修という手法が問題にされる前に、政策の目的である「上海路線を維持するべきかどうか」が県議会等で真剣に議論され、県民の間でもきちんと論争されるべきであったのである。

 

■政策目的が適切かどうかの検証が必要

 ところで、南日本新聞では「上海研修問題を検証する」という記事を連載し「鹿児島の魅力づくりを進めるべき」という提言のようはものを出しているが、いかにもステレオタイプな結論である。

 上海路線開設の目的が、本県と中国との経済交流の促進であったのは自明のことであり、中国からの観光客数を拡大することが路線開設の目的の一つであったのは間違いない。

 当然ながら、県や観光関係団体、企業等は、上海路線の開設にあたって中国からの観光客誘致に向けた取り組みを進めてきたわけで、「鹿児島の魅力の発信」に取り組んできたはずである。にもかかわらず、南日本新聞では「上海路線の維持のためには、鹿児島の魅力づくりが必要」といった記事で締めくくっているのである。まるで今まで関係者が何にも取り組んでいなかったかのような論調なのである。

 路線開設以来すでに11年が経過しており、「今から何をするのか」を述べる前に、「今までの『鹿児島の魅力づくり』が中国人観光客の拡大につながったのか」、すでに結果が出ているのであり、その結果を評価することが本当の意味での検証といえるのではないか。

 

■必要なことは上海路線の開設による経済効果の検証

 では、何をもって「上海路線の維持が必要かどうか」を検証すればよいのか。

 今回の研修を実施した目的が「上海路線の維持」であり、さらに上海路線を維持する目的が「本県と中国との経済交流」を促進することにあることは言うまでもない。とすれば、上海路線を開設したことにより、本県と中国との間での経済交流が促進されたかどうかを検証することが最も重要な評価基準となる。

 具体的に言えば、経済交流が進んだかどうかは、経済面で言えば「中国との輸出入額の変化」を見ればよく、観光面で言えば「中国人観光客数の変化」を評価すれば良いのである。これらの数値が上海路線開設以降どのように推移しているかを検証すれば、上海路線の開設による経済効果があったかどうかを見極めることができる。

 こうした数値の検証が本来必要なことであり、上海路線を維持すべきかどうかの判断基準になるのである。

上原 智之(ウエハラトモユキ)

上原 智之(ウエハラトモユキ)

昭和62年3月、早稲田大学法学部卒業。同年4月、山一證券株式会社に入社。平成2年3月同社を退社し、平成3年5月、株式会社鹿児島総合研究所(当時はMBC総合研究所)に入社。平成12年から政策研究部長として、同社の政策立案、調査研究・コンサルティング業務に従事。平成17年3月に鹿児島総合研究所を退社し、同年5月有限会社リサーチ&コンサルティング鹿児島を設立。
※平成27年1月6日、急逝いたしました。

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