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県スーパーアリーナの議論はどうなった?

2014.12.10
執筆者:編集スタッフ

  2020年の鹿児島国体開催に向けた県スーパーアリーナを鹿児島本港区のドルフィンポートに建設する計画について、紆余曲折の後、県知事が「全面的に見直す」との方針を明らかにしてから既に1年が経過しました。その後、霧島市溝辺町の鹿児島臨空団地への誘致に関する署名活動や商業者団体などが中心となったドルフィンポートへの立地に関する要望などの動きはありますが、県の検討過程に関する報道が全くなされず、また県民の議論も盛り上がりに欠けていることが気がかりでなりません。このままでは、せっかく起こった県民の政策に対する関心が急速に萎んでしまうのではないかと懸念しています。

 

■立地戦略としての「街なか」の選択

 結論からいうと、私は、県スーパーアリーナをドルフィンポートなどの「街なか」に立地することに賛成です。

 その理由は、巨額の税金が投じられて建設された街なかの大規模スポーツ施設が、域外のビジターを集める装置となり、その結果、経済活動が促されることによって、地域が活性化する可能性があるからです。そもそも「街なか」は、人が集まりやすい機能やアクセス性を有していますが、最近はその集客力が低下してきています。そこに大規模スポーツ施設が整備され、スポーツ興行やコンサート等が域内外の人を集めることで、集客ビジネスによる事業収入が見込まれるとともに、その集客力を「街なか」のにぎわい再生につなげることもできます。

 

■スーパーアリーナと体育館の違い

 ところで、スーパーアリーナとは何なのでしょうか、体育館とどのように違いのでしょうか。

 これまで国内におけるスポーツ施設は、郊外等に立地する単機能型体育施設として建設されてきました。これに対してスーパーアリーナは、スポーツ施設としての機能以外にも多機能複合型、民間活力導入、街なか立地、収益力向上等がキーワードになると考えられます。言い換えると、体育館としての機能に加え、スポーツイベントや文化的イベント、コンサート等の興行、展示会、式典、コンベンションなどが開催でき、さらに周辺部には、商業・飲食空間、健康づくり施設、公園等の憩いの場などが配置された中核的な交流施設と捉えることができます。

 

■“なに”で集客するのかが不明確

 私が「街なか」立地に賛成する最大の根拠は、体育館という単機能型のスポーツ施設にはないもの、スーパーアリーナが域外のビジターを多く集める装置になる可能性を持っているからです。しかし、“なに”で集客するのか、言い換えるとスーパーアリーナの体育館以外の機能について、これまで議論はほとんどありません。

 県は、コンベンション、展示会、コンサート等を想定しているようです。しかし、誰がこれらのイベントを誘致するのか、どれくらいの規模のイベントを想定しているのか、それが実現可能なのかなどについて、行政ではこれまで全く検討してないことが、先般行われた県議会の一般質問で明らかになりました。

 

■福岡、長崎では取り組みがスタートしている

 スーパーアリーナという箱をつくったら、様々なイベントが催され、それを目的に域外のビジターが集まるのでしょうか。そんな魔法はあり得ないことは、県民交流センターを見れば明らかです。バスケットボールやバレーボールの国際大会も、誘致して運営する組織がなければ開催されません。

 また、県が想定しているコンベンションや展示会など観光以外の集客については、世界中からの誘致合戦が繰り広げられている中で、福岡や長崎では、すでに具体的な取り組みを進めています。

 MICEという言葉をご存知でしょうか。これは、企業等の会議・ミーティングある「M」、企業等の報奨・研修旅行であるインセンティブツアーの「I」、学会や大会であるコンベンションの「C」、見本市や展示会であるエキシビションおよびコンサートやスポーツ大会などのイベントの「E」の頭文字をとって並べた造語で、現在も使われているコンベンションという言葉にかわり、近年一般観光以外の誘致対象を総称する言葉としてアジアを中心に使用されています。

 福岡では「東アジアのビジネスハブ」をめざし、誘致に関する組織「MICEビューロー」を創設し、具体的な誘致に向けて動き出しています。長崎では長崎駅隣接地に「長崎MICEセンター」の整備に向けて整備可能性調査を実施しています。

 多くの識者が指摘しているように、世界中のヒト、ビジネス、カネを如何にして地域に呼び込むか。いま、世界の国・都市・地域が総力を挙げてしのぎを削る中、鹿児島はすでに一歩も二歩も遅れをとっていると言わざるを得ません。

 

■「街なか」の中でも最もアクセス性の高い場所が望ましい

 私は、スーパーアリーナの体育館以外の機能として、MICEを念頭に置いています。スポーツのみならず、アジアを中心とした世界中からのヒト、ビジネス、カネが交流する空間としてスーパーアリーナを整備することが、今後の鹿児島の存在価値を維持・発展させる最大の戦略であると考えています。

 このような考え方に立つと、立地戦略としては国外、県外からのアクセス性の高い立地にすることが必要です。

 ドルフィンポートへの立地については、「街なか」であり、現在も集客施設が立地していることから、適地であることは疑う余地はありません。懸念されることは、国外、県外からのビジターが、迷うことなく来訪できるかという点と、私が考えるスーパーアリーナの機能を整備することが、空間的に可能なのかどうかという点です。

 それでは最適な立地場所はどこか。大量輸送機関との接続、大規模で利用可能な未利用地の存在、街なかへの立地などを考えると、鹿児島駅の隣接地が想起されます。広範囲から集客が可能な鹿児島中央駅から一駅、アクセス性に問題はありません。

 現在、市有地であるこの土地は、JR九州軌道敷とJR貨物ヤードに挟まれた間口約90m、奥行約400mの細長い敷地です。もしJR貨物の土地まで利用できれば、多機能型スーパーアリーナを建設するのに十分な規模となります。大きな集客装置を駅と直結することで、JRも大きな便益を享受することができ、交渉の余地は十分にあると考えます。また、錦江湾側には民間企業が所有する広大な土地もあり、さらに大規模や開発が必要となった場合の拡張性もあります。

 

■都市の成長戦略と一石二鳥

 鹿児島駅周辺は市内でも最も衰退が激しい地域です。この市有地の活用策について、鹿児島市では、公園化を進めていくことに決定しています。ただし、公園をつくったとしても、鹿児島駅周辺の活性化が図られるでしょうか。もとはというと、西鹿児島駅(現在の鹿児島中央駅)への中心駅機能の移転や県庁、農協連などの相次ぐ移転が、この地域の衰退の一因であると考えられます。その県やJRが鹿児島駅周辺の再活性化に取り組むことは、非常に意義のあることです。

 体育館機能だけではなく、多機能型複合施設としてのスーパーアリーナが鹿児島駅隣接地に整備されることで、スポーツ興行等の集客ビジネスが活発に行われるとともに、周辺にはスポーツショップやスポーツバーなどの商業・飲食機能が充実し、あわせて鹿児島市で検討しているバスターミナルが整備されれば、地方都市における新しいタイプの都市再生モデルとなり、スーパーアリーナが核となった集客ビジネスの創出も期待できます。また、MICE施設が併設されれば、アジアのビジネス交流拠点として、さらに様々なサービス産業の集積が見込まれます。

 行政や議会においては、スーパーアリーナの体育館以外の機能として、「コンベンション、展示会、コンサート等」といった言葉を並べ、「しかし実現は非常に厳しい」というような、お茶を濁す程度のやり取りではなく、しっかりとした調査研究を行った上で、本質的な議論の展開を望みます。

 

編集スタッフ

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