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薩摩大使誕生秘話

2014.11.16
執筆者:菅井 憲郎(スガイノリオ)

 

 全国各地で各種の大使制度ができている。ふるさと大使とか観光大使など、呼び名はいろいろだが、600以上もある。また、大使として活躍している人は、歌手やタレントなどの芸能人、文化人、スポーツ選手、有識者など、実に、1万人以上もいる。

 これらの大使の起源は、わが薩摩大使にある。

 その大使制度の現状を見ると、ほとんどが看板だけで、名誉職になっているようだ。テレビなどで見ると、大使となっていることを誇りに思い、自慢げに話している。しかし、その大使が何をしているかというと、はっきりとは見えてこない。

 

■焼酎を県外に売り込む際の「逆転の発想」

 私が薩摩大使制度を考えたきっかけは、鹿児島物産展で福岡に行った時のこと。

 オープンの前夜、同行の職員たちと博多の居酒屋に行った。イモ焼酎を頼むと、すぐに出てくる。その頃、ほかの土地では、イモ焼酎を頼んでも、「焼酎?」と言って、いぶかしげな表情をされる。それが、博多では、スンナリ出てくる。「ナゼか。」

 店の人に聞くと、どうも九電の人たちが飲んでいるようだ。同じような経験を札幌でした。こちらは、自衛隊の人たちである。

 なるほど、鹿児島に勤務したことのある人たちが、イモ焼酎に馴染んで、転勤先でも飲んでいる。しかも、その客に合わせて、飲み屋さんもイモ焼酎を置いている。

 これまで、焼酎の販路拡大には、飲み屋さんとか酒屋さんを回って、置いてくださいと頼んでいた。その時の答えは、「飲む客がいません。」だった。

 これまでの売り込みの方法が違っていたのだ。売り込む先は、店ではなく、客だ。地元の客が求めれば、置く。

 そこで、考えた。焼酎に限らず県産品の販路拡大は、県外の消費者に直接働きかけ、口コミで広めてもらおう。

 

■ターゲットは「転勤族」、「出張族」、「講師」

 では、どのよう人に頼むか。これは、湯布院の街づくりをリードした溝口薫平さんの話がヒントになった。溝口さんたち湯布院の旅館の主人は、有名人が泊ると聞くと、その人の部屋に焼酎ビンを持って押しかけていく。客を囲んで外の情報を仕入れて、街づくりに生かしたと聞いた。

 鹿児島にも九電や自衛隊のような転勤族をはじめ、出張や講演などでいろいろな人がやってくる。

 そういう人は、それなりの影響力を持っている。その人たちに頼んで、県産品を日常の暮らしで使ったり、お中元やお歳暮などの贈り物にしてもらおう。

 そうなると、ネーミングが大切。このネーミングには、内容が分りやすいことはもとより、インパクトがあり、委嘱されて、喜んで引き受けてもらえることが条件だ。そのためには、頼まれた人のプライドをくすぐることだ。

 あわせて、その役割も考えた。県外では鹿児島の情報を発信し、県内向けには情報を伝達してもらうことである。

 こんなことを考えた結果、「大使」と名付けた。また、その冠には、「鹿児島」ではなく、「薩摩」を付けた。この言葉のブランド力は、大変大きい。さつま揚げ、サツマイモだけではない。英語では、ミカンや陶器なども、「さつま」と呼ばれている。

 

■幻に終わった「薩摩勲章」

 このようにして誕生した薩摩大使であるが、実現しなかったアイデアがある。それは薩摩勲章。明治維新の直前、パリで万博があった時、薩摩藩は、勲章をナポレオン三世に差上げて、国際法に照らし一つの国として認めてもらった。

 これを知事に提案すると、国に聞いてみるという。そんなもの、反対されるに決まっている。パロデイだから勝手に作ってしまえばいいのである。

 全国各地で、「何々国」と名乗っているところがある。しかし、本気になって独立するのではない。鹿児島だって、勲章を造ったからと言って、独立するわけがない。自立心を奮い立たせたかったのである。国が反対したら、それこそ話題になる。国からやってきた役人には、このパロデイが分からなかった。

 

■余談として

 もう一つ、この大使制度が、消えかけたことがある。ある年、財政担当者がやってきて予算査定の段階で、幹部が廃止を決めたという。相談したが、上司には逆らえないから、成行きに任せようということになった。

 その時である。全国紙のコラムで、「全国に優れたアイデア」と紹介された。幹部たちは、やめることができなくなったということで、息を吹き返した。それが今でもつづけられている。

 大使制度ができて長年たち、形骸化の様相が見えてきた現在、その役割や内容を見直し、一層の充実を図ることが必要である。

 

菅井 憲郎(スガイノリオ)

菅井 憲郎(スガイノリオ)

慶応義塾大(経済)卒。
警察庁、外務省、兵庫県、茨城県に勤務後、鹿児島県庁で青少年育成、消費者保護、国際交流、高齢者福祉、職員研修、産業振興(商工業、林業、水産業)、ウォーターフロント開発等を担当。その後、鹿児島総合研究所専務取締役、鹿児島国際大学大学院教授、鹿児島県立短期大学講師等に勤務する傍ら、運輸事業(バス、船舶等)の経営にも携わる。
著書に「自治体の国際化政策」、「ムラからの国際交流」、「虹色の鹿児島を描く」など。政策研究・論文及び講演等多数。

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