わかりにくい路線バスの系統番号
- 2014.10.3
- 執筆者:野口 誠(ノグチマコト)
■路線バスの課題と鹿児島の系統番号の現状
旅行や出張で、県外などの土地勘のない街を訪れることがある。その際に公共交通を利用する機会も多いが、それが路線バスとなるとちょっと厄介だ。「乗り場はどこか」から始まって「目的地を通るのか」、「どのバス停で降りるのか」などわからないことが多い。迷った末、結局は案内所やバスの運転手さんに尋ねたという経験をお持ちの方も多いだろう。路面電車や鉄道、地下鉄など「軌道系」の公共交通に比べ、一般道路を走行する路線バスはルートや停留所の位置などが特定しづらく、どうしてもわかりにくくなってしまう。
鹿児島市内の路線バスも、これまでしばしば「わかりにくい」と言われてきた。よく話題になるのは鹿児島中央駅前のバス乗り場だが、ここで取り上げる「路線バスの系統番号」も負けてはいない。本来は路線をわかりやすくするはずなのに、各事業者で個々に付番しているためバラバラでとてもわかりにくいのだ。以下に2つの事例を挙げるが、このような状態では、乗るべきバスを利用者が系統番号から類推するのはほぼ不可能といっていい。
【事例①】同じ系統番号だが運行区間が事業者別にまったく異なる例
系統番号「5」を例にとると、以下のように運行区間が事業者別にバラバラである。
・ 事業者A…中心市街地~国道3号線~下伊敷・日当平住宅方面(鹿児島市北西部方面)
・ 事業者B…中心市街地~騎射場~谷山~七ツ島方面(鹿児島市南部方面)
・ 事業者C…中心市街地~吉野~中別府団地方面(鹿児島市北部方面)
【事例②】運行路線がほぼ同じなのに事業者によって系統番号が異なる例
「鹿児島中央駅前~城山団地~玉里団地」というほぼ同じ路線を2事業者が運行しているが、系統番号は「4」、「77」と全く異なる番号を付番している。
■求められる利用者への「歩み寄り」
路線バスの利用者は年々減少傾向にある。東京や大阪など大都市ならともかく、鹿児島市のような地方都市では、利便性の面でマイカーなどにまず及ばないからだ。利用者数を少しでも増やす、あるいはせめて維持するためには「バスに乗りましょう」と訴えるだけではなく、公共交通自体を使いやすく便利にする、いわば公共交通の側から利用者に歩み寄る姿勢が不可欠だろう。
もちろん路線バスの側もただ傍観していただけでない。筆者の印象では、九州新幹線の部分開通(2004年3月)あたりからいろいろな「歩み寄り」が目立ってきた。商業集積が進む鹿児島中央駅の発着便・経由便の新設、23時以降に中心市街地を出発する深夜バスの増加などが主な例である。利用者のニーズに対応しようとするこうした試みは評価できる。
では系統番号はどうか。実は、鹿児島市北西部方面へ向かう路線では、どうやら一定の調整が行われているようである。【事例③】をご覧いただきたい。
【事例③】中心市街地と鹿児島市北西部方面を結ぶ路線(国道3号線経由)
55-1 事業者A 中心市街地(鹿児島中央駅経由)~国道3号線~郡山~スパランドららら
56 事業者A 中心市街地~国道3号線~郡山~常盤~岳
57 事業者A 中心市街地~国道3号線~郡山~里岳~岳
57 事業者B 中心市街地~国道3号線~郡山
57-1 事業者B 中心市街地(鹿児島中央駅経由)~国道3号線~郡山方面
60 事業者A 中心市街地~国道3号線~丸岡
61-1 事業者C 中心市街地(鹿児島中央駅経由)~国道3号線~健康の森公園
62 事業者A 中心市街地~国道3号線~花野団地
※ 下伊敷バス停時刻表やインターネット情報から一部路線を抜粋して作成。
事業者は異なっても、50番台は郡山方面行の路線に、また60番台は郡山より少し手前の花野団地行などに付番されている。鹿児島中央駅経由の系統に枝番「-1」が付くのも共通事項のようだ。
その一方で、同じ鹿児島市北西部方面で運行する別の事業者は、以前から使っている独自の系統番号をそのまま継続使用しており、全事業者で足並みが揃っているわけではない。また、情報提供はあくまで事業者別にとどまり、これらの路線全体を一覧できる表や路線図はバス停にもネット上にも見当たらない。さらに厄介なことに、バス停に掲示してある時刻表に系統番号が明記されていない路線も多い。何とも中途半端なのだ。結局は利用者が、事業者別に提供される情報を収集・解読しなくてはならないのである。
■利用者目線で系統番号の見直しを
以上のように、鹿児島市の路線バスの系統番号はまだまだ事業者本位の運用にとどまっている。私たち利用者は「無理して乗らなくていいですよ」と言われているようなものだ。さらなる「歩み寄り」のためには、系統番号を利用者本位の目線で捉え直す必要があるだろう。実は九州内にすでに先進事例がある。大分市では平成18年12月、事業者別に付番していた路線バスの系統番号を共通のルールで統一した。詳細は省くが、系統番号は「アルファベット」と「数字」との組合せとし、「アルファベット」は大分駅を中心に北からA,B,C…と時計回りで付番するなど工夫を凝らしている。さらには、公共交通マップの作成・配布という「合わせ技」も使って、利用者への一層の浸透を図ったそうだ。
大分市に先を越されてしまったが、とかく「わかりにくい」といわれてきた鹿児島市の路線バスを改善するうえで、系統番号の再編は大きな可能性を有するのではないか。事業者間の調整など様々な困難もあるかとは思うが、「使いやすくわかりやすい路線バス」を実現すべく、ピンチをチャンスと捉えてぜひ見直しに前向きに取組んでいただきたいと思う。
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