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民間活動を妨げることにならないか

2014.9.25
執筆者:編集スタッフ

 

■市立病院跡地を市が購入

 近年中に、市立病院及び交通局の移転が行われます。その後の跡地利用について、7月24日の市長定例記者会見にて、鹿児島市の方針が発表されました。それによると、市立病院跡地については、現病院敷地のみ(道路を挟む駐車場用地は除く)を市立病院から市が取得する、交通局跡地は、交通局施設リニューアル事業の財源確保の観点から、民間等への売却を検討するとのことです。

 市で取得することに決まった市立病院跡地について、「中心市街地活性化基本計画区域内にある貴重な土地であり、将来のまちづくりに有効に活用することが見込めること」を、取得の根拠としています。この土地の活用方法、利用目的や利用用途については、現時点で全く決まっておらず、今年度中を目途に市の内部で今後検討する方針のようです。

 一方、交通局跡地については、民間等への売却にあたり、鹿児島市のまちづくりの観点から、跡地利用の提案公募による売却という手法をとるようです。

 

■行政が土地を所有する際の判断基準

 地価の下落傾向が続き、また財政事情の一層悪化するなどの様々な環境変化が生じている中で、市立病院跡地のように、当面、具体的な利用が見込まれない公共用地については、将来の利用に備えて行政が保有すべきか、民間に売却すべきかを、慎重に判断することが必要であることは言うまでもありません。その際の判断基準として、中心市街地活性化基本計画区域内に立地する大規模な土地という考え方のみで十分な判断基準となりえるのかを検証していく必要があるのではないでしょうか。

 

■取得という結論に至った根拠に問題はないか

 判断基準の考え方としては、市立病院跡地について、市が保有することによって生ずることが期待される価値と、市が保有することに伴う機会費用とを比較し、期待価値が機会費用を上回るような場合には保有し、逆であれば処分することが考えられます。これをどのように試算するかが課題ですが、特に公共的な利益について、具体的な試算が現実的にはなかなか容易ではありません。また、前提条件によって結論が変わり得るものであり、数値化によって判断基準が明確になる類のものではないことも念頭に置く必要があります。いずれにせよ、数値化まではしていなくても、市が取得を決定した根拠について、もう少し掘り下げた説明を求めることが必要です。

 ちなみに、市が保有することによる期待価値とは、公共用に利用されることに伴う公共的利益、また保有せずに売却したが、将来同じような土地を公共用地として再調達することになった場合に取得費用がかからないメリットなどが考えられます。他方、市が保有することに伴う機会費用は、市立病院跡地で民間の経済活動が行われないことによる逸失利益等が考えられます。

 

■中心市街地は民間が活用すべきでは

 そもそも中心市街地は、相当数の小売商業者や都市機能が集積している地域であり、機能的な都市活動の確保、または経済活力の維持が可能な地域です。とすれば、中心市街地の土地は、基本的には民間の経済活動によって土地の有する価値を最大限発揮できるようにすることが、本来の姿であるべきです。

 中心市街地を活性化させていくためには、行政の投資はもちろん必要ですが、それよりまして民間による多様な投資を呼びこむことが重要です。民間の投資が、中心市街地の価値を高め、さらに民間の投資を呼ぶような好循環ができてはじめて、持続的に発展する地域になりえます。行政の投資は、民間の投資を促すための、いわば呼び水であったり、側面的な支援に限定されるべきです。

 

■行政が中心市街地に大規模な土地を所有するための意義

 他方、行政が土地を取得する場合も検討する必要があります。中心市街地の計画区域内という土地の性格上、単に公共的な施設を立地するのではなく、民間の経済活動を促す機能を整備する必要があることは、既に述べたとおりです。

 民間が取得すると、その土地の利用は民間に委ねられます。例えばマンション等の建設を想定した場合、住宅需要が供給量に対応して増加していけば問題は生じませんが、供給過剰の状態になると、土地価格の下落や既存住宅ストックの低利用化を促進してしまう可能性も考えられます。また、鹿児島中央駅周辺や郊外への大型ショッピングモールの建設などによって、天文館を中心とした商業機能が低下傾向にあることも事実です。

 このように民間の経済活動のみに委ねた場合のマイナス面は、様々な面で存在します。要は、これらを詳細に検討した上で、行政が必要最小限に関与しつつ、民間の活発な経済活動を促していくための都市機能を整備することが、市がこの土地を取得する意義だと思います。

 問題は、利用目的も用途も「現時点で全く決まっていない」中で、土地の取得のみが決定されたことです。

 

■塩漬けにならないために

 実は、同じような事例が過去にもありました。

 中心市街地活性化基本計画区域内にある鹿児島駅隣接の約3ヘクタールの土地は、平成15年度に市が取得しました。それから10年余り経って出来上がったプランは、「公園化」でした。この土地の取得は、鹿児島駅周辺地区の地域活力の低下を防ぐことが当初の主目的であったと思われます。しかし、10年余りを検討に費やした結論が、目的を達成する可能性の低い公園の整備です。

 また、鹿児島中央駅西側の県工業試験業跡地については、その活用方法を鹿児島県、鹿児島市、JRなどが協議会をつくって長年検討してきましたが、結論は導き出されないばかりか、最近売却の可能性も出てきています。検討期間中に民間の経済活動が行われたら、鹿児島の経済に対してどれほどのプラス効果をもたらしたのでしょうか。

 行政が、公共的利益の獲得のために中心市街地に土地を所有することを否定する意図は全くありません。ただ行政が、明確な根拠もなく、いわば感覚的に土地を取得することは、あってはならないことだと思います。

 

編集スタッフ

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