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ポイントがずれている鹿児島県の観光プロモーション

2014.8.29
執筆者:上原 智之(ウエハラトモユキ)

 

■なぜ「柏木 由紀」がPRキャラなのか

 昨年度から鹿児島県の観光PRのメインキャラクターとなっているのが、AKB48の「柏木 由

紀」である。AKBのメンバーを起用しているのが良いとか悪いとか言うつもりはない。ただ、鹿児島県をPRするのになぜ「柏木 由紀」なのか、という疑問は多くの人が感じているのではないのだろうか。

 たしかに「柏木 由紀」は、10代、20代の若者には絶大な知名度を誇っているだろう。しかし、鹿児島県が誘客したいと考えている年齢層は、本当に10代、20代の若者なのだろうか。

 一般に、旅行に行く頻度が高いのは「中高年」であり、旅行先での消費額が多いのも「中高年」である。一方、鹿児島県の観光資源は「景観」であり、「温泉」であり、「歴史文化」であり、「食」である。これらを考えると、誘客のターゲットとするべき年齢層が「中高年」なのは明らかだろう。

 にもかかわらず、鹿児島県の観光PRのメインキャラクターがなぜ「柏木 由紀」なのだろうか。誘客したい年齢層にアピールする力がどれ程あるのか大いに疑問である。

 

 それではなぜ「柏木 由紀」なのか。その選択には、漠然と地元出身の有名人であるということだけが優先され、ターゲットとすべき年齢層に訴求する人かどうかといったことは考慮されなかったのではないか。これでは、マーケティングの基本認識が欠けているとしか思えないのである。

 どんなCMであっても、ターゲット層を明確にし、その層に対して訴求力がある人を起用するのが当たり前である。そうした認識が欠けているとしか思えない鹿児島県の観光PRのメインキャラクターの選択は、ピントがずれているとしか思えないのである。

 

■惰性で続けているとしか思えない観光キャラバン

 同様に観光PRのつもりでやっているのだが、観光PRになっていないのが、鹿児島市等が行っている観光キャラバンである。なぜか続けられている観光キャラバンだが、ほとんどやる効果はなく、意味がない取り組みである。

 そもそも観光キャラバンが行われてきた意味は何なのか。それは、各地を訪問し特産品等を配ったりして直接人々に観光地をPRすることなんかではない。観光キャラバンが訪れたことを訪問先のメディアが取り上げることにより、広くその地域の人々にPRをすることにある。いわゆるパブリシティ効果を期待してのことだったはずである。

 しかしながら、観光キャラバンを現在実施している自治体は、観光キャラバンの目的が何かわかっていないのではないか。鹿児島県の自治体が実施している観光キャラバンが訪問先のメディアに大々的に取り上げられたなどとは聞いたことがない。特産品等を配ったりして、地元をPRできたと思っているかもしれないが、それは自己満足に過ぎないのである。

 にもかかわらず、何の代わり映えもしない、「かごしま親善大使」などを従えて、全国各地を訪問しているのである。一度始めたら止められない、自治体の典型的な無駄な事業の一つになってしまっている。

 

■何をPRしたいかわからない「本物。鹿児島県」

 最後に、鹿児島県の観光PRで最もダメだと思うものが、鹿児島県の観光PRのキャッチフレース「本物。鹿児島県」である。

 「本物。鹿児島県」では、鹿児島県の何をアピールしたいのかまったくわからない。その裏返しとも言えるのだが、「本物。宮崎県」でも「本物。熊本県」でも何ら違和感がなく、鹿児島という字を他の都道府県名に変えればそれで十分に通用する。これでは、キャッチフレーズの体をまったくなしていないのである。

 おそらく「本物。鹿児島県」というキャッチフレーズを考えた時には、鹿児島県の観光資源は「あれもある」、「これもある」と議論された結果、「本物」などというよくわからない抽象的な言葉でまとめようということになったのだろう。

 しかし、キャッチフレースに求められるのは、人々をひきつけるインパクトがある言葉であり、そのためには「あれもある」、「これもある」ではなく、人々を最もひきつける要素に絞り込まなければならない。キャッチフレーズに求められるのは「足し算」ではなく「引き算」なのである。

 

■マーケティングの基本を踏まえた観光PRを

 鹿児島県は観光に限らずあらゆる面でPR下手とよく言われる。その通りなのであろう。だからと言って奇をてらった取り組みをする必要はない。まずは基本に忠実にしたがってプロモーション戦略を構築し、実行することである。

 現在鹿児島県が行っている観光PRは、プロモーション戦略の基本にまったく合致していないのである。誘客したいと考えるターゲットをきちんと絞り込み、それに合わせた戦略として、キャッチフレーズを設定し、メインキャラクターを選択し、効果が期待できるプロモーション活動を実施しなければならないのである。

 それができないと、今鹿児島県が行っているような、観光PRとは名ばかりの、何ら効果が期待できない自己満足の取り組みに終わってしまうのである。

 

上原 智之(ウエハラトモユキ)

上原 智之(ウエハラトモユキ)

昭和62年3月、早稲田大学法学部卒業。同年4月、山一證券株式会社に入社。平成2年3月同社を退社し、平成3年5月、株式会社鹿児島総合研究所(当時はMBC総合研究所)に入社。平成12年から政策研究部長として、同社の政策立案、調査研究・コンサルティング業務に従事。平成17年3月に鹿児島総合研究所を退社し、同年5月有限会社リサーチ&コンサルティング鹿児島を設立。
※平成27年1月6日、急逝いたしました。

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