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郊外型住宅団地に迫る危機

2014.7.9
執筆者:編集スタッフ

 

■郊外型住宅団地の危機に対して行政は無関心

 高度経済成長期の頃、大都市・地方都市を問わず、その郊外に丘陵部を切り崩して戸建て中心の住宅団地が数多く開発され、庶民が手の届くような価格で住宅を提供することを可能とする政策が進められました。それが現在では、高齢化が急速に進むとともに、各種公共施設の老朽化、空地・空き家の増加、スーパー等の撤退等商業機能の低下などの諸問題を抱え込む状況になっています。

 この問題は、かなり前から指摘されており新鮮さは欠けますが、これまで鹿児島市においても、抜本的な対策はほとんどなされていません。放っておくと、もっと深刻な行政課題となっていくことが予想されますが、行政など政策決定者から、このテーマに関する議論はこれまでほとんど聞こえてきません。

 なぜ無関心なのでしょうか。現状のままでは行政の役割に限界があり、従来の施策の延長線上では、効果的な打開策を打ち出すことができないからです。未知の領域での課題であり多様で難易度が高いこの課題に対して、行政自らが課題として認識し、県民に対してその危機を公表し、その解決策を見つけ出していこうという意思や気概のようなものを、今の行政に求めても無理があります。

 

■世代継承がなく人口構造が硬直化していることが大きな要因

 

 以前、日本政策投資銀行南九州支店から「鹿児島市の人口構造変化に関する調査結果」が発表されました。このレポートによると、鹿児島市の郊外型団地の高齢化の速度が県内の他の地域と比較して非常に高いことや、市南部より北部の方が高い高齢化率となっていることなどが指摘されています。また、団地住民の年齢構成の偏りが強いこと、団地住民の入れ替わりが乏しいことが、特定年齢層の住民の固定化を招き、その年齢層が一度に高齢化することによって、オールドタウン化と呼ばれるような複合的問題が発生することが懸念されると整理されています。その対策として、既存の住宅団地住民の高齢者が安心して生活できる環境の整備をまず優先させること、またエリアマネジメントの体制を整備していくことが提言されています。

 

■経過年数との相関だけでは説明できない住宅団地の高齢化問題

 

 レポートでは、住宅団地の開発時期と人口構成の分析が中心です。そのため、団地開発からの経過年数と団地の高齢化の相関が高いことが指摘されています。具体的には、高齢化が進んでいる住宅団地として、市北部の伊敷団地、千年団地、玉里団地、城山団地が挙げられ、いずれも開発から30年以上が経過して、開発当初の購入世代が一度に高齢化し、30%を超える高齢化となっていると分析しています。

 一方、これらの住宅団地より開発時期が早い紫原団地は、高齢化が19.6%で、幅広い世代が満遍なく居住しています。開発時期にかかわらず、高齢化が急速に進んだ住宅団地と進まない住宅団地があるということが現実です。

 私は、世代継承がうまくなされ、新陳代謝が活発な住宅団地である紫原団地とその他の住宅団地を比較分析することが、住宅団地のオールドタウン化問題の解決に向けて、非常に有意義なことであると考えています。

 

■紫原団地はなぜ、高齢化が進まないのかを検証することが必要

 

 紫原団地が最も古いにもかかわらず、現在に至ったのでしょうか。それは、団地内での新陳代謝が自然発生的に起こったからです。その要因について、以下の5つの点を指摘したいと思います。

 まず1点目が、規模が大きいことです。紫原団地は1丁目から7丁目まであり、人口が23,198人、世帯数が10,014世帯と市内で最大の住宅団地です。そのため、団地内消費力が高く、日常生活に十分な商業機能や医療体制などを備えることが可能となり、生活利便性の向上につながっています。

 2点目としては、中心市街地や大型商業施設等とのアクセス性が高いことが挙げられます。通勤・通学、娯楽やエンターテイメントなどへのアクセス性は、居住場所の選択の際に非常に重要な要素です。車移動の利便性はもとより、バス路線、便数も充実していることなど、公共交通機関が発達している点も重要です。

 3点目としては、少しずつ段階的に開発が進んだことも挙げられます。この結果、新規住民の年齢層が分散されることにつながり、極端な年齢構成の偏りを避けることが可能となったと推測できます。

 4点目としては、大学や短期大学、企業の存在が挙げられます。単純に考えて、10代後半から20代、30代の単身世帯の居住者が一定程度確保できることが一番のメリットです。また、サービス業に対する昼間の需要も確保できるとともに、若年世代の高い外食率などを背景に、飲食店や各種サービス業などの立地が促され、利便性の高い居住環境が形成されたこともメリットとして指摘できます。

 5点目としては、ファミリー向けの戸建て住宅や分譲・賃貸マンション、単身者用の賃貸マンションなど、幅広い世代や生活スタイルに対応できるバリエーションを有していることが挙げられます。このことは、幅広い年代の多様なライフスタイルに対応できる居住環境を備えているということができます。また、多様な賃貸マンションが充実していることは、将来、大学や短大、あるいは社会人として一度生活した経験のある人が居住する可能性が高いこととなります。

 

■他の団地への応用は可能か

 新陳代謝が活発な紫原団地の成功の要因を、他の住宅団地にそのまま当てはめても、すべてうまくいくとは限りません。うまくいかないケース、そもそも当てはまらないケースの方が多いでしょう。ただし、要因分析は無駄ではありません。規模が小さければ周囲の団地などと一体的な生活空間をつくるためのインフラや仕組みを整える、企業の立地が難しければ昼間に多世代が集まる何かを考える、中心市街地等へのアクセス性が確保できなければ利便性を超えた価値を見いだすなど、その地域にあった効果的な解決策を検討する土台となるからです。

 悔やまれるのは、鹿児島市が最も早く整備した紫原団地が住宅団地の持続的な維持のための新陳代謝を備えていながら、その後にできた住宅団地に反映できなかったことです。

 

■現実的な問題として直視することが必要

 本来、住宅地は、家族が多世代にわたって住み続ける、あるいは高齢者の後に若い世代が入居するという形で世代の継承がなされなければ、持続可能性を持ちえません。農村部、特に中山間地域においては、そうした居住の持続可能性が完全に失われてしまうケース、いわゆる限界集落が少なくありませんが、鹿児島市の住宅団地においても同じような事態が発生しつつあることを直視しなければなりません。現に一部の住宅団地では、準限界集落(55歳以上の人口比率が50%を超えているケース)となっている箇所も見られます。

 また、現実的なこととして、緑ヶ丘団地や千年団地において、団地内スーパーが撤退しました。団地内の購買力の低下が主な原因であり、居住者の高齢化が進んでいる中で、鹿児島市の住宅団地においても、いわゆる「買い物難民」が発生する可能性も無視できません。買い物難民は、出張販売や宅配サービスなどへの支援、行政によるコミュニティバス運行など、新しい財政負担につながっていく可能性もあります。

 このような中で、できるだけ早く県民の議論を喚起しつつ、行政においても喫緊の重要課題として位置づけ、効果的な打開策を見いだす意思を示していただきたいと感じています。

編集スタッフ

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