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時論・創論 生活

次期鹿児島国体の先を目指して

2014.6.23
執筆者:編集スタッフ

 

■国体開催予定地における画一的な取り組み

 2020年に予定されている国体開催に向けて、本県では様々な取り組みがスタートしています。

 県教育委員会がまとめた「次期国体に向けた競技力向上計画」(以下、本計画)において、平成24年から平成32年までの期間を育成期、強化期、充実期と段階的に分けて重点的に施策を実施していくこととなっています。国体の開催が内定した都道府県は、ほとんど本計画と同様の計画を策定しており、その内容もほぼ同じ内容となっています。具体的には、目標が「天皇杯・皇后杯の獲得(=総合優勝)」であること、目標達成のためのステップ、育成期、強化期、充実期という段階的な目標まで同じです(中には「定着期」を設けている地域もあります)。目標に向けた取り組みも、組織、指導体制、選手の発掘・育成・強化、環境整備という4つの柱となっています。

 

■開催地が総合優勝となっている現実

 目標がどの開催地も同様であることを指摘しましたが、結果として、開催地がその目標を達成していることも、一部の例外を除けば紛れもない事実です。また、国体開催の翌年には、開催前と同じレベルの順位に逆戻りしています。

 なぜ、これほどまでに開催県だけが優勝を勝ち取ることができるのでしょうか。

 実は、開催地に有利となる制度が存在するようです。開催地以外は各ブロックの予選を勝ち抜いて初めて本大会出場がかなう仕組みとなっていますが、開催県は予選が免除されるため、すべての種目で出場ポイントが加算されます。また、よく批判されることですが、開催の数年前より有力選手を他県から補強し、体育教員枠を過度に拡充して競技選手を獲得するといった方策がとられてきたことも指摘されています。

 このような点を鑑みると、本計画における国体での総合優勝のみに焦点を絞った目標設定では、一過性のスポーツ振興に陥ってしまうのではないかという懸念をいだいています。

 

■掲げる目標は「本県の継続的なスポーツの進展」

 本計画の序文でも指摘されているように、本県スポーツ選手の活躍は、県民に大きな夢と感動をもたらすものであり、県民の連帯感を高め、郷土愛を培うとともに、本県におけるスポーツの普及・振興に大きな効果を及ぼすこととなります。このためには、国体で総合優勝するという一過性のものではなく、本県のトップアスリートを継続的に育成していくことが本質的な目標となるべきです。国体開催は、その目標達成に向けたきっかけに過ぎないという認識が必要です。

 それでは、トップアスリートを継続的に育成していくには、何が必要か。私は、第一に有望なジュニア選手の発掘・育成であり、次に、ジュニア期からトップレベルに至るまでの戦略的、体系的な指導体制の構築だと思います。

 

■注目されているタレント発掘・育成事業

 有望なジュニア選手をどのように発掘・育成していくべきでしょうか。

 現在、12の都道府県で実施している政策に、「タレント発掘・育成事業」というものがあります。この事業は、ある競技での経験を有するジュニア選手の中から、その競技での優れた素質を有するものを発掘するのではなく、競技経験に関係なく優れた素質を有するジュニア選手を識別し、適性の高い競技に接続して育成を図ろうとするものです。「選抜」とは明確に区別される概念である「識別」をすることで、既存の競技者層からではカバーしきれない人材群から、優れた素質を見つけ出す可能性を高めることができます。

 

■偶発性の最小化

 これまでの競技力向上策は、競技団体等に対する支援が中心であり、「特定のスポーツで成功すると考えられる競技者を見つけるために、現在そのスポーツに参加している競技者をスクリーニングする」という「選抜」の考え方が基本となった政策を行っています。これでは、あるスポーツに対して優れた素質を持つ競技者が、たまたまそのスポーツの経験を持っていることが必要です。タレント発掘・育成事業は、この「たまたま=偶発性」を最小化しようという取り組みと言うことができます。

 県を代表するようなトップアスリートは、一朝一夕に育つわけではありません。アスリート自身や家族、指導者のたゆまぬ努力に加えて、自分の適した競技に巡りあうことも重要なことなのです。

 

■タレント発掘・育成事業は全国に広がっている

 2000年に文部科学省によって定められた「スポーツ振興基本計画」において、競技者育成プログラムの策定と整備が重要視されています。それに基づき、国立スポーツ科学センター、日本オリンピック委員会(JOC)及び地域が、今後の国際競技力向上のための方策として、長期的な視点からタレント発掘・育成の導入を検討し始めました。これが日本のタレント発掘・育成事業の始まりであり、2004年に「福岡県タレント発掘事業」が立ち上がり、現在は12地域にまで広がっています。また導入から10余年経過していることで、国際大会への出場や国内大会での優勝などの成果も多く見られるようになってきているようです。

 鹿児島県においても、早期にこの事業を導入して欲しいと思っています。その契機が国体開催に向けた競技力強化の一環ということでも全く差し障りはありません。

 

■ジュニア期からトップレベルまでの一貫指導体制

 トップアスリートを継続的に育成していく第二の政策は、ジュニア期からトップレベルに至るまでの戦略的、体系的な指導体制の構築です。このことは、新聞紙上でも、一貫指導体制の確立が課題であるという表現で指摘されています。

 一貫指導体制がなぜ必要なのでしょうか。トップアスリートを育成していくためには、目先のその時々の勝利ではなく、一人の競技者を長期的視野に立って育成していくという意思が最も重要な視点だからです。ジュニア期の成長度合いは一様ではなく、ある課題に対して吸収しやすい時期と吸収しにくい時期があります。当然ながら、吸収しやすい時期にその課題を与えていくことが、その競技者を最終的に一番大きく成長させることにつながります。スポーツ種別やチーム、指導者が変わっていっても、指導者全体がその競技者の将来、全体像を意識して、それぞれの担当の年代に適した形で指導をしていって初めて、大輪の花が咲きます。そのために一貫指導体制が必要なのです。

 

■セカンドキャリア問題への処方箋としての一貫指導体制

 鹿児島県は、高校生までは全国レベルの競技力を持っている競技が多くあります。野球、サッカー、バレーボール、柔道など、ここ数年、全国大会で相当の結果を残しています。これらのトップレベルの選手でも、卒業後、プロスポーツ選手になる確立は低く、プロになったとしても、生涯にわたってスポーツのみで生計を立てていける人は非常に限られています。県民に大きな夢と感動をもたらしたこれらの選手は、引退後、どこで、どのような職業に就いているのでしょうか。

 このようなスポーツ選手の引退後のセカンドキャリアについて、鹿児島県でその受け皿が教員以外にほとんどありません。トップアスリートは、自らのキャリア形成を直接活かすことができるスポーツ指導者への需要が高く、鹿児島県にその受け皿がないことは、他の地域で就職せざるを得ないことになります。私は、優秀な指導者の卵を受け入れることができないことが、本県のスポーツ振興にとってマイナスの影響を与えているように感じています。

 そこで、前述したタレント発掘・育成事業を含めた一貫指導体制を構築するとともに、その実行組織で引退したトップアスリートの雇用の場を確保する、という方策は考えられないでしょうか。

 

■セカンドキャリア問題の解決が本県のスポーツビジネスにつながる

 実行組織で雇用したトップアスリートを、タレント発掘・育成事業の運営のみならず、総合型スポーツクラブやジュニアを対象とした地域のスポーツクラブなどに派遣したり、学校教育や部活動に活用したりするなど、多くの活躍の場が創出できます。また、スポーツ興行の誘致を行う事業など、スポーツ関連ビジネスの起業につながることも考えられます。

 これらを長期的に実現していくためには、トップレベルの競技キャリアがトップレベル指導者能力を有するというこれまでの根拠の無い慣習に頼るばかりでなく、彼らに対するコーチング能力をより一層育成させていくこと=コーチング養成システムが必要です。

 

 東京オリンピックと同年に開催される鹿児島国体。大きな財政出動を伴うビッグプロジェクトのため、税金の無駄遣いなどその存在意義が問われだしています。このような中で、開催地自身が一過性の取り組みとしてではなく、地域のスポーツ振興や地域の活性化に上手に取り込むというような、新しい国体開催のあり方を検討する転機となるような大会にしていただきたいものです。

 

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