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時論・創論 自治

真の地方の代弁者を

2014.6.11
執筆者:恵原 義之(エバラヨシユキ)

■地方の時代と言いながら進む東京への集中

 マスコミも官僚も政党も経済界も、「地域振興」、「地方分権」、「地方と都市部の共存」などの掛け声だけは高いのですが、現実にはあらゆるものの大都市圏へ の集中が進んでいるようにみえます。各地域では官民を挙げて、公私の別なく、多くのボランティアも参画してそれぞれに頑張っているのですが、大都市圏との 差は広がるばかりです。ことに東京への集中が目立ちます。その結果、地方の過疎、高齢化が一層進むことのみならず、東京で決めることがすべて、という風潮 になっている感があります。多くの国民はそれを疑うことすらありません。国の基本たる食料も外国産の輸入品に頼ろうとする動きがみられます。現状のままで は残念ながら地方の声が国政に生かされることは難しいでしょう。中央が地方に関与するのは、自たちの考える政策を進める上で必要と考えられる時だけです。

 

■人口予測でも明らかな地方の疲弊

 地方都市、道・県の人口の長期減少傾向は続いています。残念ながら昨年も鹿児島県の人口は大きく減少しました。国の人口が減っているのだから仕方がない、との意見もあります。

 日本の人口が減少に転じたのは二〇〇八年とされています。それでも世帯数はまだ増加し続けてきました。それもやがては減少に転じます。国立社会保障・人口問 題研究所の推計では、世帯数は二〇一五年にピークを迎え、翌年から減少に転じる、と予測しています。そうなると、個人消費、世帯消費もみるみる減少してい くことは避けられません。近い将来加速度的に減じる、との予測数字が出されています。

 

■大都市への依存度をさらに高める「国家戦略特区」の問題点

 民間消費が減少していくことは自明ですが、政府は「国家戦略特区」なる構想を発表しています。そこでは、経済の強化策として東京、大阪などの主要都市で「世 界で一番ビジネスのしやすい環境」を整える、というものです。世界各国からやって来る企業やビジネスマンにとっては居心地のよい街が出来上がるわけです が、そこで従来から生活している人にとっても居心地のよい街となるでしょうか。ここでは主従が逆転しています。すなわち、企業は高収益を上げるが、そこで 生活し働く人にとってどうなるかは示されていません。また、特区に認定されない地方都市で企業活動は明らかに不利になります。これに異を唱える政党も政治 家も、また報道・評論もなかなか目に付きません。

 企業にとって経済活動がしやすい、とはどういうことか。つまり、通信インフラが整備され、交通インフラが他の国や都市に比して有利であり、税制で有利な位置 を国や自治体から保障されます。また、オフィス環境、住環境が国際水準に整えられ、飲食・娯楽施設も充実していることが求められます。企業経営者の使命は 「利益の最大化」であり、この政策を推し進めていくと、雇用については働く人よりも雇用する側の力が強く、賃金決定権も雇用者側が主導権を持つことになり ます。企業は利益を上げることが容易となり、「労働配分率」がますます低下することは目に見えています。一部の優良企業が従業員の給与水準を上げるかもし れませんが、それは少数派であり、利益が先に投資家、経営者に回されることは明白です。結局、企業活動は効率性の高い大都市圏、特に東京に集中し、そこで も従業員がより高い生活水準を維持できるとは限らない、ということになりかねません。

 

■オリンピック誘致にみる東京への投資加速

 われわれ国民の方にも反省すべき点は多々あります。まだ記憶に新しいところですが、多くの国民が二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックの招致成功に 喝采を上げました。誘致運動が始まってからも一部にはこれに批判的な見解も出されましたが、圧倒的ともいえる官民挙げての運動にかき消され、マスコミでも これらの動きを採りあげることはまれでした。私個人は、五輪や万博は途上国やこれから国際舞台に登場しようとする国にこそふさわしい、と考えていますから 消極的反対派でした。

 それにしても、あの盛り上がりは異常でした。誘致本部は先だって招致活動の決算を公表し、招致活動の資金が十数億円余ったと発表しました。よほど潤沢な予算 だったと思われますが、いったい招致予算はいくらだったでしょうか。そこには、東京都の税金のみならず、国の税金も多く投入されています。招致都市の発表 の時、飛び上がって喜んでいた大勢の人たち、あれだけ人があの会場にいる必要があったのか、あのスポーツ選手やあのタレントにどれほどのギャラが支払われ たのか、庶民感覚としては知りたいものです。

 これから競技場の建設、選手村の建設、これに乗じて道路や鉄道の延長、また新線の計画が次々と進められていきます。すべてが税金によるものではありません が、ともかく東京を中心に資金と労働力が大量に投下されることは間違いありません。関連施設やホテルの改築改修計画も次々と発表されています。

 

■東京への投資加速による弊害

 オリンピック招致は一つの事例に過ぎませんが、ここ数年、中央政府が力を入れている政策の多くはますますヒト・モノ・カネを大都市圏に呼び込んでいます。そ れでも首都圏は人手不足が深刻になっているようです。東北復興の掛け声のもと、建築土木の労働者が高い報酬に引かれて東北各県に集中し、首都圏で人手足り なくなったというのです。その結果、労賃が上がり、今度は中小の製造業や店舗の経営にも影響が出てきています。それでいて低賃金の職場はそのままです。賃 金の高い職場に移動すればよいではないか、という人もいますが、現実には簡単ではありません。定住して働いている若い人がいきなり異なる業種、異なる通勤 圏に移動することは容易ではありません。

 

■真の地方の代弁者を

 今のわが国の雰囲気は、まるで「大きいものはいいことだ」の高度経済成長時代の再現を夢見ているかのようです。このような価値観を持つ人たちは、前世紀の考 えから脱却できないのでしょう。特に、二十世紀後半の生活を支えてきた経済成長、規模の拡大、施設の大型化、集中化をなお延命しようとする考えです。途上 国、新興国における「開発経済」の場なら有効な手段ですが、成熟した社会ではむしろ、産業立地の分散化、土地利用の適正化、多様な価値観を認め合うことが 求められます。それは、経済成長率は低くとも国民は比較的豊かな生活をしているヨーロッパのいくつかの国に見ることができます。国家間競争のために、相対 的に競争力の低い地方を犠牲にしてよいはずはありません。我々国民が「烏合の衆」となることなく、一つ一つの政策の可否を自分の頭で考え、常に地方自治 体、中央政府の政策を監視し、「最も適切な代弁者」を選ばなければならない時と感じます。

 

恵原 義之(エバラヨシユキ)

恵原 義之(エバラヨシユキ)

1945年鹿児島県奄美市生まれ。大阪外国語大学(現、大阪大学外国語学部)卒、早稲大学アジア太平洋センタービジネススクール修了、
1971年株式会社電通入社。営業企画局企画推進部長、SP局海外事業部長、国際事業局次長、インド事務所長等の業務に従事。現在、同社社友。
関東学院大学人間環境学部にて非常勤講師(メディア論、南アジア論、等)。法政大学沖縄文化研究所国内研究員、日本島嶼学会、奄美郷土研究会にて小論を発表している。
著書に「インド・パースベクティヴ」(ボイジャー社2008)、「カンボジア号幻影」(新風舎2005)、「砂マンダラ」(海風社2007)等。

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