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不透明感が否めない鹿児島市の土地購入

2014.5.13
執筆者:上原 智之(ウエハラトモユキ)

 

■鹿児島市の公共施設整備の手順のおかしさ

 環境未来館、サンエール鹿児島(男女共同参画センター)、鹿児島市立病院。これらは、鹿児島市が近年整備した、あるいは整備しようとしている大規模な公共施設である。

 これらの施設整備の方法には共通点がある。それは、特定の事業者が所有している土地を購入し、公共施設を整備している点である。環境未来館は鹿児島実業、サンエール鹿児島は樟南高校、市立病院はJTが所有していた土地である。そして、施設整備にあたっては、土地購入を決定してからその利用法を考えるという手順に基づいて施設整備がなされているという点である。

 これは、本来の公共施設の整備のあるべき姿とは大きくかけ離れている。本来の公共施設の整備は、整備したい施設の機能・内容・規模等が検討され、それに適した候補地を選定・購入し、そこに施設を整備するというのが本筋である。

 鹿児島市が大規模な公共施設を整備する際にとっている手法はこれとまったく異なる手法であり、きわめておかしな手順で行われているのである。

 

■利用者のことをまったく考慮していない公共施設の立地

 こうした手順で整備されてきた公共施設の問題は一体どこにあるのか。

 多くの施設に共通しているのは、土地ありきでの施設整備になっているため、整備した施設が利用者ニーズにあった場所に立地していないということである。

 例えば、環境未来館は、自家用車の来訪は制限されているにもかかわらず、公共交通網から離れており、一体だれに利用してもらおうとしているのかよくわからない。また、サンエール鹿児島は、本来の整備目的であるはずの男女共同参画事業の関連での利用よりも、近くの高校等に通う学生の自主学習の場として活用が多くなっているのである。

 施設を利用したい人々が「利用しやすい場所」に立地していないことが、こうした問題を引き起こしている大きな要因と考えられるのである。

 

■行政への土地売却に対する優遇措置の弊害

 では、なぜこうした土地利用が行われてきたのか。それは、大規模な土地を所有している事業者が行政に土地を売却したい、という欲求がその背景にあると考えられる。

 通常土地を売却した場合、譲渡益に対して所得税15%+住民税5%の計20%が税金としてかかる。しかし、特例として、行政が「公共用地取得目的」として土地を取得した場合には、売却益が非課税になるのである。

 仮に土地を売却して10億円の売却益が出た場合、通常なら2億円の税金を払わなければならないのだが、行政に買ってもらえば税金は「ただ」になるのである。土地所有者が、少々安くても行政に売りたいのはもっともなのである。

 もちろん、行政にとって利用価値があるので土地を購入するのであれば何ら問題はない。しかし、鹿児島市の場合は土地を買うことを決めてから利用法を考えるという手順となっており、整備が必要な施設があってそのための土地を購入しているのではないのである。こうなると、市が土地を購入する行為が、土地所有者の税金対策に手を貸していると見られても仕方ないのである。

 さらに言えば、土地所有者と市当局との間に何かあるのではないかという疑念さえも抱かざるを得ないのである。

 

■同様の行為を行っている鹿児島県のマスコミ

 なぜこうした土地利用のあり方がこれまでマスコミにとりあげられなかったのだろうか。それは鹿児島県のマスコミは、同じようなことを行ってきたからではないだろうか。

 例えば、南日本新聞は、本社跡地を鹿児島市に売却した。その交渉の際にはいろいろな経緯があったと聞く。市役所に隣接しており、市役所の別館が立地するには適地だったかもしれない。しかし、直接市と取引するのは避けるべきではなかったのか。マスコミは行政との間での経済的行為については極力距離をおくべきではないだろうか。

 「李下に冠を正さず」ではないが、行政当局の問題点を指摘できないことにつながりかねない行為は厳に慎むべきである。それができてはじめて、行政が行っている様々な事業等の問題点に意見が言えるのではないか。

 

■利用者の利便性に最大に配慮した施設の立地を

 今後鹿児島市が整備する公共施設は限られるだろう。数少ない公共施設の整備にあたっては、これまでのような「不透明な」土地利用が行われてはならない。

 公共施設の整備の本来の姿である①施設の機能・内容・規模の検討→②候補地の選定・決定→③土地の購入→④施設の整備という正しい手順にしたがって施設は整備されるべきである。

 中でも、立地場所の選定はその後の施設利用者数に大きな影響を与えるものであり、施設利用の対象となる人口の分布、関連団体の立地状況、公共交通の整備状況など、人々が「利用しやすい」場所はどこかを十分に考慮したうえで整備を図る必要がある。

 人々が集まりやすい中心市街地においても、効果的な利活用がされていない土地はまだまだ残されているのである。土地が確保しやすいまとまった土地だけを安易に利用しようとするのではなく、土地の集約・確保は大変であっても利用者の利便性に最大限に配慮した土地利用を図っていくことが求められるのである。

 

上原 智之(ウエハラトモユキ)

上原 智之(ウエハラトモユキ)

昭和62年3月、早稲田大学法学部卒業。同年4月、山一證券株式会社に入社。平成2年3月同社を退社し、平成3年5月、株式会社鹿児島総合研究所(当時はMBC総合研究所)に入社。平成12年から政策研究部長として、同社の政策立案、調査研究・コンサルティング業務に従事。平成17年3月に鹿児島総合研究所を退社し、同年5月有限会社リサーチ&コンサルティング鹿児島を設立。
※平成27年1月6日、急逝いたしました。

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