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県総合体育館建設を巡る一連の議論の検証(2)

2014.5.2
執筆者:編集スタッフ

 2020年の鹿児島国体開催に向けて建設を予定している新しい県総合体育館を巡る全県的な議論に関して、県の動向や新聞等の論調をもとに、独自の視点で検証を行いました。

 第1回は、新聞報道や世論の動向、それらの議論とは異なる本質的な課題の抽出、最近の大規模スポーツ施設の立地戦略の概観などについて整理しました。

 今回は、大規模スポーツ施設の立地戦略において重視すべき点を整理するとともに、現在の鹿児島におけるスポーツ施設等の立地状況を踏まえ、県総合体育館を建設する場合の望ましい立地場所について、具体的に検討していきます。

 

■鹿児島県におけるこれまでの大規模スポーツ施設の立地

 県総合体育館の立地戦略を検討するに当たって、鹿児島市内におけるこれまでの大規模スポーツ施設の立地状況を概観することとします。

 観客席を有する大規模スポーツ施設は、鹿児島県が所有するものが鴨池地区と中山地区(H26使用開始予定)に、鹿児島市が所有するものが鴨池地区と永吉地区に立地しています。鴨池地区にある県総合体育センター(野球場、陸上競技場、補助グランド、体育館等)は、1972年に開催された国体の会場として整備されたスポーツ施設です。同地区には鹿児島市の市民球場や鴨池公園水泳プールも立地しており、スポーツ施設の集積地となっています。中山地区にあるふれあいスポーツランド内は、県と市の施設が隣接する形で整備されており、その中の「県立サッカー・ラグビー場」は、天然芝2面、人工芝1面のグラウンドと観客席などが整備されます。永吉地区の鹿児島アリーナは、移動観覧席システムを備え、トップレベルの競技大会やコンサートなどの各種興行を楽しめる多目的施設となっています。

 

■街なかの近くに集積された鴨池の県総合体育センター

 これらの立地を鳥瞰すると、40数年前に整備された大規模スポーツ施設は、①鴨池地区に集積立地していること、また、②市の中心部からそう遠くないエリアに立地していることなどから、当時の行政は、国体の効率的な運営を図るべく、一定地域に集約して整備するという立地戦略を持っていたことが窺えます。ただし、整備されてから相当の年月を経ており、老朽化はもちろんのこと、整備当時はスポーツ施設が集客装置となり、その結果経済活動が促進されるという考え方はなかったと思われ、現実的にも、商業や飲食機能などは備わっていません。造りも、コンクリートむき出しの概観、アスファルトで固められた広場や通路など、多くの人が日常的に憩い、集える場所とは言えません。

 

■時代に逆行する分散型・単機能型の立地

 一方、近年整備されたものは、もともと空き地であった場所や大きな公共的な施設の跡地に整備していったため、分散立地となっているばかりか、郊外立地、車に依存した交通アクセス環境など、近年の全国的な大規模スポーツ施設の立地動向とはまったく異なる方向性での立地場所の選定であったと感じます。

 その一例である中山地区のふれあいスポーツランドは、先日「県立サッカー・ラグビー場」が整備され、これまで市が整備した公園やプール、屋内運動場などを含めると健康・スポーツというテーマの中での複合機能を有する施設となっています。しかしながら、観客席はベンチと芝スタンドで約6500人の収容規模、商業や飲食機能はほとんどなく、交通アクセスは車中心であり、大規模なスポーツイベントを開催して県内外から集客するという利用はなかなか見込めない造りとなっています。せいぜいプロチームのスポーツ合宿や県内のスポーツ大会くらいの利用が関の山ではないでしょうか。

 

■ドルフィンポートへの立地を求める市民の声

 このような中で、最近、天文館の商業者の団体や周辺地域の市民団体などが中心となって、県総合体育館をドルフィンポートに立地してほしいという市民の声があがっています。鹿児島中央駅周辺部や郊外部への大規模商業施設の立地などによって相対的に集客力が低下してきている天文館及び上町地域において、県総合体育館の建設が集客装置となり、その結果経済活動が促され、地域の再活性化が図られるという構図を期待してのことであると考えられます。

 この誘致活動は、天文館や上町の商業者としては当然のことであると思います。大規模スポーツ施設は、スポーツをする人だけではなく、日常的な健康づくり、スポーツファッションや健康を重視したライフスタイルを求める人など、様々な人が集まってくる可能性があります。都市の集客装置としての力が十分あることを見込んでのことであると想像できます。

 

■ウォーターフロント地区は体育館の最適な立地場所か

 しかしながら、ドルフィンポートの場所が、県総合体育館の最適な立地場所であるかどうかは別問題です。長崎のハウステンボスのようなテーマパーク、下関の唐戸市場のような観光拠点となりえる魚類市場、横浜の山下公園のようなデートスポット、福岡のマリノアシティのようなアウトレットモールなど、ドルフィンポートの場所のポテンシャルを十分に発揮でき、県総合体育館より集客が可能な施設が他にもあると思います。現在は、鹿児島県では話題に上がりませんが、東京や大阪、長崎や宮崎などが積極的に誘致に動いているカジノも、観光客等の集客という観点からの検討がなされても不思議ではありません。要は、天文館という鹿児島が誇る商業集積に隣接するウィーターフロント地区の集客装置として最もふさわしいものは何かを、県民全体でもっと議論しなければならないということです。

 

■県総合体育館の最適な立地場所

 それでは、新しい県総合体育館を整備する場所として、最も望ましい地域はどこでしょうか。まず第一に想定されるのは、鴨池地域ではないでしょうか。今の県体育館も含め、大規模なスポーツ施設が集積していることが最大の理由です。ただし、前にも指摘した通り、商業や飲食機能が備わっていないこと、大量輸送が可能な公共交通機関と直接、接続していないことなどが課題です。

 また、この地域には、大規模で開発可能な空き地がないことも課題でしょう。ただし、大規模な公共的施設を整備するにあたっては、再開発事業などに見られるように、土地の買収などで必要な空間をつくることも可能であり、公共的施設の最適立地の観点からは、この方法が、まるでパッチワークのように空き地を埋めていく方法より一般的であるとも言えます。

 私は以前、鹿児島大学水産学部をJT跡地(現在、市立病院と交通局を整備中)に移転してもらい、その跡地に体育館と商業・飲食機能を整備できないかと考えたことがあります。現段階では到底無理ですが、大規模スポーツ施設の一体的な整備とスポーツ関連の商業やサービス業が集積する一大スポーツ地域となりえたのではないでしょうか。

 

■現実的な選択肢としての鹿児島駅隣接地

 次に考えられる地域は、公共交通機関との接続、大規模で利用可能な空き地の存在、天文館及び上町地域の集客など街なかへの立地などを念頭におくと、鹿児島駅の隣接地域が想定されます。広範囲からの集客が可能な鹿児島中央駅から一駅、以前は鹿児島の中心であったこの地域は、今では地域活力の衰退度合いが最も高い地域になっています。

 鹿児島駅の東側に約2.5haの鹿児島市所有の土地があります。JR九州軌道敷とJR貨物ヤードに挟まれた間口約 9m、奥行約400mの細長い敷地です。現在は公園として整備する方針となっています。もし仮に、この土地に隣接するJR貨物の土地まで利用できるとすると、多機能型のスーパーアリーナを建設するのに十分な規模となります。JR貨物の土地を利用できるかどうかが課題ですが、大規模な集客装置が鹿児島駅と直結されることは、JRの利用者も激増することになり、交渉の余地は十分にあると考えられます。

 

■都市の成長戦略としての大規模スポーツ施設の立地

 これまで2回にわたって、県総合体育館の立地について検討してきました。1回目では、①大規模スポーツ施設は人を集める装置であり、その結果、経済活動が促進されること、②その中核となるのは集客ビジネスによる事業収益であり、立地条件が収益性を決める大きな要因になること、③このような観点から、郊外への立地ではなく、街なかへの立地が不可欠であること、を指摘しました。その上で今回は、鹿児島のスポーツ施設の立地状況を概観するとともに、現実的な選択肢のひとつとして、街なかでかつ大量輸送が可能な公共交通機関と直結している鹿児島駅隣接地への立地を提案しました。

 これからの都市の成長戦略として、都市に様々な企業や人が集まり相互依存関係を持つことで、多様なシナジーが生まれてくるという都市の集積効果の重要性が増しています。都市の集積効果を発揮するためには、集客装置の存在が不可欠です。その中核施設として、大規模スポーツ施設を位置づけるという基本的な考え方をベースに、県総合体育館の立地場所を検討していってもらいたいと考えます。

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