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インタビュー 自治

前県議会議長 金子万寿夫さんに聞く(第2回インタビュー)

2014.3.11
執筆者:編集スタッフ

 

 地方分権改革が進む中で、その受け皿となるべき県議会は、現在どのような課題があり、今後どのように改革を進めていくべきか。
 平成17年から3期にわたり県議会議長を務められるとともに、全国都道府県議会議長会会長(平成21年~平成22年)としてもご活躍された金子万寿夫さんへのインタビューを、2回にわたって掲載します。

 第2回は、第1回目に引き続き、県議会議員の選出基盤としての選挙区の望ましい姿や監視機能を高めるための方法、また分権型自治の最終章に位置づけられている道州制について掲載いたします。

 

3.議員の選出基盤としての選挙区について

■選出基盤を地方で決められない

編集長

少し話しは変わるんですけど、選挙区のことについて、先生は複数人区がいいという持論をお持ちと聞いていますが。

金子氏

現在の選挙法では、選挙区を「郡市とする」と書いてあります。今頃「郡市」を単位とする法律がなぜ残っているんだといつも言っています。国会議員も、総務省も、地方議員の議会制度に対して認識がない。総務省は議員の身分に関わることだから、自分たちからは提言できないと言う。

昔は議員数の上限というものがありました。今は、上限はなくし、条例で定めると改正されました。上限は取っ払って定数は条例で定める、選出基盤は国が法律で決めることになる。私は、選挙区は歴史や地形に合わせて、それぞれの県の条例で決めるべきじゃないかと、こういう論旨で提案しました。

編集長

そのような中で、選出基盤としては複数人区が望ましいと。

金子氏

「郡市」単位とすると、一人区の選挙区が多く存在することになります。

国会議員を集めた会議にいったときに、「一人区であったら、そこで自民党の先生が当選したら、しばらくはもう無投票ですよ。けれども、これが三人区だったらあの先生には敵わないが、一番にはなれないが三番にはなれると志のある若い人たちが挑戦する体制になるんですよ」と言ったら、「ああ、その通りだ」と僕に深々頭を下げた。しかし、改正案として出ているのは、まったく異なる考え方でつくられた法案になっています。

 

■選出基盤が地方議員の固定化という状態をつくってしまう

編集長

先生の持論は、今は一人区ばかりあって小選挙区に近く、議員が固定されて、新しい良い芽が出てこないという見方ですね。

金子氏

複数人区の選挙区なら、もっと女性議員であるとか、若い人であるとか、まさに多様な意見が集約できる。それは、議員の選出基盤のあり方にかかっていると思います。

編集長

先生がおっしゃるような複数人区の方がいいというのは、国政もそう感じます。

今は、一回選挙すれば1/3は新人議員みたいな世界です。それが本当に正しいのか。新陳代謝は起こらないといけないが、一回通って次は負けて、という先生ばかり出てきても国会が国会としての機能を果たすのかと疑問に思います。

金子氏

二代目しか当選できないよね。結論的には。

本当に自民党で、地方議員をやりながら、街頭演説をしながら、そして階段を上ってきた国会議員というのはもう存在しなくなるかもしれない。本当に政治をわかった上で国会議員になるという人がいなくなる恐れもあります。

五期以上くらいやった国会議員の後継ぎというのは、東京で生まれて、東京の学校出て卒業する。そんな人が地方からポッと国会議員候補になる。

 

■地方議員の選出基盤は地方に任せて欲しい

編集長

ある種、地方もそれの縮図的なところが、法律や制度的な問題もあって残されてしまっているわけですね。地方に任せるみたいな案とかは出てこないんですか。

金子氏

任せるべきです。地方議会が責任を持てばいいわけですよ。まさにそれこそ自治だと思います。

編集長

全然話は違いますが、アメリカの地方議会では、あるところは議員が三人くらいしかいない。あるところは何十人もいてボランティア的にやっているところもあって、多種多様ですよね。あれこそが地方議会ではないかと思うのですが。

金子氏

県議会議員に共産党議員が一人もいないところも多いんですよ。少数政党に非常に厳しい環境がある。私個人としては、共産党の主義主張とは相反するんですが、県民の多様な意見としては、代表の一人や二人は必要だと思います。

編集長

歪み過ぎていますね。世論調査しても、今だったら民主党と大差ないし、事実、共産党は3位か4位になっています。そういう面で、選挙制度も大きく変えなければいけない。特に地方は。できれば、地方の選挙制度は地方が決めるルールになるのが本来の姿だと思います。

 

 

4.地方議員の党や会派単位での活動について

■二元代表制では党よりも県民の多様な意見に軸足をおくべき

編集長

地方議員と党や会派との関係について、思うところはありますか。

金子氏

党との関係ですね。僕は、地方議員は地方政府議員というくらいの意識を持って欲しい。政党に所属することは当然それなりのお考えなんでしょうけど。

編集長

あくまでも、無党派に近いイメージの議員であって欲しいということですか。

金子氏

この間、自民党が政権を離れたとき、自民党の中央が、民主党政権に対する反政府的な意見書を出せと言ってきました。それは強制ではないのですが、鹿児島県の自民党県議は対応してきました。それも、自分たちが政権をとったら絶対できないというような意見書が出てきたりしましたね。

編集長

そういう面もあるんでしょうけど。別の視点として、例えば県議会の一般質問を見ていると、個人の意見が大部分のような気がします。議員個々人の。党や会派に所属しているわけであって、党や会派の意思としての質問が見られません。国会だったらまずそんなことないわけです。

金子氏

議員内閣制とは違うので、結局、政党単位の政治活動というのは、地方議会の中ではあまり馴染まないんじゃないですかね。

むしろ、地方議員のあり方としては、議員一人ひとりが多様な県民の主権者の意見を受け止めることを議員活動の基本にするべきであって、政党の党の論議に軸足を置くというよりも、やっぱり県民の多様な意見に軸足を置くというのが当然だと思います。

 

■会派は執行部に対峙できるように組織力をつけるべき

編集長

党の関係と言った場合、例えば、議員一人が何千人の執行部との議論になります。チェック機能を発揮するとしても、議員が一人ひとりで行動していたら、なかなか役割を果たしきれないと思うんですよね。

金子氏

そこは会派を組んでそこでやらなきゃならない。それは当然情報量からしたって、圧倒的に負ける。地方議員がそれだけの活動をしなければならないし、そのためには費用も必要です。議会費は、14億円くらいだと思いますが、県の全体予算のわずか0.2%くらいしかない。政務調査費もいろんな議論があるところですが、二元代表制の一方を担うためにはそれなりの活動が必要であり、スタッフなどの地盤が必要です。

編集長

逆に、議会費を増やしてもいいと思っています。議員一人ひとりの給料ではなくて政務調査費を月100万円にするなど。その代わり、先生方が政策スタッフを持つ、あるいは会派単位があればそこでプールして政策スタッフを雇うなど。

金子氏

当然そういう部分を高めていくことも大切です。しかし一番変わらなければならないのは議員の意識であり、選挙民の意識です。先ほども言うように、選挙民はみんな首長しか見ていない。本当はみなさんに代わって物事を決めた議会に目線を向けるべきだと。政策が悪ければ、市長が悪い、知事が悪いと言うけれど、議会が悪いとは誰も言わないでしょ。

編集長

主権者はあくまでも選挙民であって議員なんですよね。首長というのはあくまでも業務執行を代行させているだけの人だから。

このような意味で、正直言ってハードルはすごく高いと思うんですよね。道州制は。地方の職員の意識とか、地方議員の意識が、大きく一番変わらなきゃならない。国会議員がいくら議論してこういう風にした方がいいと言っても、受け皿の側の心構えができていないんだったらどうしようもない。

 

5.道州制について

■道州制の議論は国に対する期待の裏返し

編集長

最後に、道州制についてお伺いします。道州制は進めるべきですか。

金子氏

地方分権の最終章というか、到達点としての制度は道州制だろうと思います。しかし、市町村からは道州制に対する反対も強いですし、全国議長会長を2年やって、いろんな議論に参加しましたが、道のりは結構険しい。

編集長

道州制については、伊藤知事も慎重派ですよね。

金子氏

知事も表立って反対はしていないんだけれどもね。

これまでの知事の発言は、今の経済情勢、社会情勢の中では、道州制はもう少し落ち着いて議論した上で進めるべきではないかというものだと理解しています。

編集長

道州制は必然というか、党派を超えての自民党も民主党も賛成していますが。

金子氏

地方からみると、身近なことは地方自治に任せてくれ、国政はもっと国家の基本政策の部分をダイナミックに進めてほしいという裏返しでもあります。地方が地方分権を求める声の一方に、国政はもっと違うことを集中的に特化してやるべきであるという意識がある。

編集長

確かにそうですね。保育所の面積がどうだとか、住民に身近なことは国レベルで考える必要はないだろうということですね。

金子氏

国に対してしっかりやって欲しいという意思だと思います。世界に向けてこの国が、経済成長、社会保障を含めていろんな意味での国家としての品格を、世界に向けて日本の国家像というのを築きあげていく、そういうところに国は集中的に取り組んで欲しい。憲法の議論だってずっと置き去りにされてきたじゃないですか。

 

■地方に道州制に対する覚悟がない

編集長

道州制について少し具体的に言うと、例えば九州府というのができるとした場合に、九州知事会が以前出された道州制のイメージ、あれは道州制の過渡期のイメージではあると思うんですけど。

金子氏

九州知事会の道州制は、地方分権がいろいろ言われる中で、大阪の橋下知事が大阪府構想を立ち上げた際に、中央省庁から「地方は覚悟がない」と言われた。大分の広瀬知事などがそれに反応して、「それでは我々は、道州制に行く前の第一段階の分権の姿として、行政機構として国の出先は自分で引き受けましょうか」と。このような流れからのスタートでした。

編集長

地方分権に積極的なのは、東京都、大阪府、愛知県などです。本当に「地方に完全に任せてくれ」と本気言っているのは。

金子氏

自治制度が始まって以来、東京に陳情を繰り返し、予算をいただき、そして行政を進めてきたという長い歴史があり、ずっとそういう自治を進めてきたわけです。地方行政の職員も、補助金漬けでがんじがらめの中、実は補助金行政をやっていた方が一番楽なんだと思います。

編集長

地方の役人は、国が1~10まで決めてくれて、それを執行するだけの方が楽なんだと思います。その意味で「地方に覚悟がない」というのは、知事がどうかというより、職員自体に「自分たちに任せてくれ」という覚悟が本当にあるのかどうかっていうのが一番だと思うんですよね。

金子氏

だから、議会も変わらなきゃいかん、課題は大きいよな。しかしね、やるべきことを実現するためには、節目で政治がドカーンとやらないと進まないよ。

 

編集長

長時間にわたって、いろいろと聞かせていただいてありがとうございました。

編集スタッフ

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