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将来展望が見えないメガソーラー事業

2014.2.16
執筆者:上原 智之(ウエハラトモユキ)

 

メガソーラーが普及した背景は「固定価格買取制度」の導入

 10月31日鹿児島市の七ツ島に全国でも有数の規模のメガソーラーが立地した。翌日の南日本新聞の記事では「関連産業や観光に期待」と締め括ってあり、メガソーラーの立地に対する経済面での期待の高さを示していた。

 ここ数年、地方において太陽光発電、あるいはメガソーラー事業が急速に普及しているのは、2012年にスタートした「固定価格買取制度」によるものである。

 「固定価格買取制度」とは、売電目的で発電した太陽光や風力などの再生可能エネルギーの発電量の全量を電力会社が買い取る義務を負う制度であり、その買取価格も定められていることから、新たに参入する事業者はリスクをほとんど負わずに事業を展開できるメリットがある。2013年度の買取価格は太陽光発電では37.8円/kWhまたは38.0円/kWhと定められており、発電コストがいくらであろうと、この価格で電力会社が買い取ってくれるのである。

 

メガソーラーの立地は地方経済に影響を与えない

 では、メガソーラーの立地が地方経済に好影響を与えるのだろうか。

 まず、雇用の面だが太陽光発電では現地のオペレーションにはほとんど人を要しない。メガソーラーが過疎地域に多く立地していることがその証明であり、ほとんど人を使わないですむからに他ならない。

 関連産業の立地はどうだろうか。関連産業としてまずあげられるのは太陽光パネルの製造であり、パネルを設置する躯体の製造・設置等である。では、太陽光パネルの製造工場の立地等が考えられるのか。ほとんど可能性がないと言える。現状では国内の太陽光パネル製造の企業は海外勢にどんどんシェアを奪われており、国内に新たな工場を建設するなど、到底ありえない。

 南日本新聞では「観光に期待」と言っているが、一体だれがメガソーラーを見に来るのだろうか。全国にはすでに大型のメガソーラーが立地しているが、観光客でにぎわっているなどとは聞いたことがない。指宿市にある地熱発電所には展示施設等があるが、来訪者は日所に少なく閑古鳥が鳴いている状態である。こうした状況をみても、観光への期待などはあり得ない。小学生の遠足の場所としては良い場所ができたと言えなくもないが。

 いずれにしても、メガソーラーが立地したことによる地方における経済的な効果はほとんど期待できないというのが実態なのである。

 

「固定価格買取制度」と「電力の小売自由化」は両立しない

 ところで、再生可能エネルギーの普及は当然の流れのようにとらえられているが、本当にこのままメガソーラー事業は普及・拡大を続けるのだろうか。

 中長期的な見方をすると、メガソーラー事業を推し進める原動力となっている「固定価格買取制度」が現状のまま続くのかは大いに疑問である。それは、「電力の小売自由化」との兼ね合いからである。

 現在、事業所用等の大口利用客に対しては電力会社以外も供給できるようになっているが、「電力の小売自由化」とは、これを家庭用に広げ、一般家庭でも電力を供給する事業者を自由に選択できるようにしようとするものである。この「電力の小売自由化」の主たる目的は、競争の導入により電力の供給価格を低減させようというものであり、消費者である国民にとっては大変歓迎すべき制度である。

 しかし、「固定価格買取制度」が現在のままで存在するならば、電力会社にとっては「電力の小売自由化」などとんでもない話であり、とても賛成できる話ではない。

 「電力の小売自由化」が導入された場合、価格を目安に事業者を選択する消費者が多数を占めるだろう。そうした場合、電力会社は高いコストで発電する再生可能エネルギーの発電コストを含めた発電コストで他の事業者と競争しなければならない。再生可能エネルギーが現在程度の発電量であったならば、まだ電力会社も競争できるかもしれない。しかし、今後再生可能エネルギーの供給量が拡大され、電力会社の供給量の中で10%、20%を占めるようになれば、発電コストは非常に高いものになり、競争ができない状況になってしまう。

 電力会社の立場からでなくとも、公平性の観点からも「固定価格買取制度」が現在のままである中で「電力の小売自由化」を導入することは、著しくバランスを欠いた政策と言わざるをえない 。

 

「固定価格買取制度」は見直される可能性が高い

 こうしたことが考えられる中、今後国はどのようなエネルギー政策をとるのだろうか。

 自民党安倍内閣においては、原子力発電との兼ね合いから、再生可能エネルギーの普及を3年間集中的に行うとしており、あと2年程度は現在の政策に大きな変化はないだろう。

 しかし、「電力の小売自由化」は長年にわたり自民党が進めてきた政策である。それに対して「固定価格買取制度」は民主党管内閣で唐突に出てきた政策である。中長期的にみて、自民党政権がどちらの政策を重要視するかは明らかであろう。ましてや「固定価格買取制度」については、先進国であるドイツにおいても制度の見直しが進められており、見直しを行う理由づけには事欠かない。

 3年後、5年後に「固定価格買取制度」が現状のままで存続するかははなはだ疑問であり、「固定価格買取制度」が見直されるのは間違いないだろう。

 

 自治体がメガソーラー事業に取り組むリスク

 以上のように将来的に不透明感が強いメガソーラー事業であるが、本県においては非常に積極的に進められている。

 そうした背景には、過疎地における遊休地等の活用など、いわゆる「地域活性化」につながるという思いがあるのだろう。しかしながら、メガソーラーの立地が「地域活性化」につながるといった「幻想」は持つべきではない。

 前半にも述べたように、メガソーラーが立地しても経済的な効果はほとんど期待できない。それどころか、事業開始時の「固定価格」が維持される10年後あるいは20年後には事業が終了してしまう可能性が高い。それは、「固定価格買取制度」は事業を開始した年度の固定価格が10年間あるいは20年間は維持されるが、技術の向上等に伴い固定価格は毎年見直されることとなっており、10年後、20年後はそのままの設備では到底採算がとれる設備ではないのである。10年間は利用されるが、その後は元の遊休地になる可能性が高いのである。

 

明確な目標を持った事業展開を

 こうした中で、メガソーラー事業を巡る地方自治体の動きを見ていると、かつて多くの自治体が工業団地を作り、売れ残ってしまったのに代表されるような、過去の失敗の繰り返しを見ているかのようである。メガソーラー事業を展開する事業者に対して「固定資産税の減免」や「土地提供の優遇」など、支援に取り組んでいる自治体も見られる。

 支援に取り組んでいる自治体に明確な目標があれば良いのだが、取り組んでいる自治体において「他の自治体も取り組んでいるから」といった横並び意識や、「国が主導的に行っているから」といった責任転嫁はないのか。

 事業を展開するのであれば、先にも述べたような事業に対するリスクをきちんと検証した上で、「地域の活性化につながる」といった漠然としたものではなく、一体どのような効果が期待できるのか、3年後、5年後にきちんと検証できる目標を定めた上で事業を展開してほしいものである。

上原 智之(ウエハラトモユキ)

上原 智之(ウエハラトモユキ)

昭和62年3月、早稲田大学法学部卒業。同年4月、山一證券株式会社に入社。平成2年3月同社を退社し、平成3年5月、株式会社鹿児島総合研究所(当時はMBC総合研究所)に入社。平成12年から政策研究部長として、同社の政策立案、調査研究・コンサルティング業務に従事。平成17年3月に鹿児島総合研究所を退社し、同年5月有限会社リサーチ&コンサルティング鹿児島を設立。
※平成27年1月6日、急逝いたしました。

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