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インタビュー 自治

前県議会議長 金子万寿夫さんに聞く(第一回インタビュー)

2014.2.22
執筆者:編集スタッフ

 地方分権改革が進む中で、その受け皿となるべき県議会は、現在どのような課題があり、今後どのように改革を進めていくべきか。
 平成17年から3期にわたり県議会議長を務められるとともに、全国都道府県議会議長会会長(平成21年~平成22年)としてもご活躍された金子万寿夫さんへのインタビューを、2回にわたって掲載します。

 

1.県議会改革への取組について

■分権型自治の真の受け皿になるよう県議会改革を進めた

編集長

県議会改革についてのお考え方についてお聞かせください。

金子

道州制も含めて地方分権改革というのは、政権がどういう形であろうとも進んでいくだろうと考えています。しかし今、財政状況、震災、社会的事案があるので進捗としては停滞気味ではありますが、いずれは地方分権国家という新しい自治の有り様を目指していかざるを得ないと思っています。

そのときに、地方分権の自治を進める上においてポイントは何かと言うと、私は地方議会だと思っています。自由度の高い財源のもと、政策を進めるための基盤を、法令や省令ではなく、議会において条例で定めていく。そうなったときに財源の使い方、政策や制度設計など、地方自治が担っていくことになります。大きな責任と役割は地方議会が持っている、と思っております。地方議会が県民の意見を集約して、最終的な県民の意思を決める、これは代表民主主義制度の中で地方議会でしかありえないわけです。

今度の上海研修だって、最終決定を下したのは議会です。自治が大きく変わっていく中において、議会が分権型自治の本当の受け皿になり得るか、その覚悟があるのか、今の私の強い思いがここにあります。このような中で、県議会改革という命題に積極的に取り組んでいかなければならない。

監視機能を高めることと、議会側からも積極的に政策をうっていくという政策立案機能を高めていくことに注力して、この8年間議会改革を進めてきました。

 

■活発化しつつある議会提案条例

編集長

議会提案の条例をつくるようになったのは数年前からですね。議会の本来持つべき役割を初めて発揮したと感じています。

金子氏

政策提言機能は、議会に主権者から付託された機能のひとつだと思っています。これまでそれをなかなか実践してこなかった。

政策立案検討委員会をつくっており、今年度は3本の政策提言をします。平成17年3月に「かごしま食と農の県民条例」が制定されて以来、議会がつくった政策条例が3本、議会の政策提言によって知事部局がつくったものが1本、内容は、暴力追放の県民条例、食と農の県民条例など、計4本です。

 

■ただし「望ましい姿」にはまだ程遠い

編集長

観光立県鹿児島県民条例を議会で検討されているときに宣言的な条例というイメージを持ちました。沖縄県議会の同様の条例であれば、例えば観光エリアに限定した義務付けなど、結構具体的に条例化しています。

金子氏

県民へのメッセージという意味での宣言的な要素は、当然、必要があります。その上に、条例を具現化していくために、議会が作った条例に基づいて、執行部で業務計画を義務付けてあるし、議会に対する報告、県民に対する開示、報告というのもきちっと織り込んでいます。また、県民や関係者、専門家の意見も取り入れております。

編集長

先ほど言われたように、議会の二本の役割、政策立案機能と監視機能の一方が、これまで全く欠けていた訳ですから。政策立案機能が発揮されはじめたということは非常に評価しているところです。

金子氏

議会の政策立案機能の改革を進めてきて、県民の皆さんの議会への注目度も随分出てきたかなと思っています。しかし、もう一つの機能であるチェック機能という部分においては、まだまだ弱いと正直思っております。

 

■議員の意識も、県民の意識も変わらなければならない

編集長

チェック機能の方がより重点を置くべきことだと思いますが。

金子氏

議会は執行部の追認機関ではないかと。予算に対する否決もなければ修正もない。この批判は受けなければならない。

ただ、今の自治制度というのは、府県制が明治21年、地方自治法が昭和22年出て以来、地方自治は、義務付け、枠づけの中で行政をやってきている。法令、省令、通達等、その中で、がんじがらめで行政を進めていく。最も国の影響力が大きいものは、すべて補助金付けの行政となっている。一つの事業に対して、これとはもっと別の選択肢があるじゃないかという議会の議論に進展していかない理由のひとつには、歳出の大かたは補助金なんですよ。国庫補助金が含まれているという中では、修正はなかなかできないのが自治の現実です。

だからこそ、自由度の高い自主財源で、自らの政策基盤になる決めごとは条例で定めるということになると、地方自治は大きく変わります。

編集長

そのような中で、議会の監視機能を高める手段として取り組まれていることは。

金子氏

「あなたのそばで県議会」というのを始めました。県民との対話を通じて感じたことは、県民は首長を見ている、知事さん、市長さん、町長さんを見ている。議会を見てくれない。政策の選択が悪いときには「市長が悪い、知事が悪い」と県民は言う。上海のこともそうでした。決めたのは議会であるのに、「議会が悪い」とは言わない。中には「議会何しているんだ」という声もありますが、ダイレクトに批判の目が集まるのは首長です。みなさんに代わって物事を決めたのは議会だから、その批判の声はむしろ議会に対して行われるべきです。「自分たちに代わって決めてくださいよ。自分たちに代わって議論してくださいよ。」といって議員に付託をしているわけです。その言葉が根底にあって、唯一の議事機関として議会を構成している訳です。しかしながら、議会に対する批判はあんまりない。当然、賛同の声も批判の声もむしろ議会に集まるべき。だから県民と議会との関係をもっと身近なものにして、議会の県民に対する立ち位置を変えていくというのが、「あなたのそばで県議会」の一歩だとお話もしています。そういう関係がしっかりできて、初めて地方自治というのは本当に自立できるんですよ。

編集長

本当の意味で、県民も二元代表制という意味がよくわかっていないですよね。首長さんが代表でやっているというイメージだけど、実はそうじゃない。

金子氏

議会は、自分たちの身近な相談相手という役割としてしか、県民が見ていないということが事実であると感じています。

編集長

その通りだと思います。議員も、県民のそのような認識をそのままにして、県民の期待にだけ応えようとしています。それが議員に物足りなさを感じてしまう点です。

 

 

2.現在の県議会の課題について

■議員に求められる「政策を決める」という覚悟

編集長

議会についてお伺いします。様々な課題があると思いますが、議員さんに欠けているところとか、今の議会に欠けている点など、思っているところはございますか。

金子氏

地域代表という側面があったりするので、地域代表に軸足を置くのか、あるいはオール鹿児島の政策に軸足を置くのかですね。それは議員のタイプとか、選出基盤の地域性とかいろいろあると思います。

例えば、上海路線の時にも県民の批判がどんどん議員に集まる。そのことで議員の皆さんも県民の声との狭間に立って、反対論も随分ありました。県民の声をしっかりと受け止めるのは議員として当然のことだと思います。どういう声であれ、多様な意見を聞く。

ただし、議員は最終的に政策を決めなければならない。あの段階で、公費で手も打たず、民間にお願いするだけで、上海路線の維持ができるのか。維持できないとすれば、やはり公費を打ってでもこの路線を維持しなければならないのかという政策を決める必要があります。県民の声も大切ですが、我々は県民の負託を受けて政策を決定しなければならない。このことは県民の皆さんは忘れてはいけない。反対の声を受けて、ただ県民がこんな声を言ったとか、自治会に行ったらこう言われたとか、そんな話ばかりしたってしょうがない。最終的に議会は決めなきゃいかん。

 

■県議会の課題は監視機能をもっと強化すること

編集長

議会については、本当にいろんな課題は残されているというのが現実としてあるということですね。議会として、具体的にこんなのが大きな課題だっていうのをひとつふたつ挙げていただけませんか。

金子氏

政策提言というのは、議員個々が、また本会議場で提言をしたり、代表質問があったり、委員会議論の中でいろいろやってきたことでもある。鹿児島県議会の政策提言は、共産党から自民党まで一致した県議会の総意としての提言としているところが非常に重い。議会全体の総意として、議会が全会派一致して政策を提言していることなので、実行できなければ、それはまさに、議会と執行部の対立構造にいくわけです。その意味で、知事も県議会の政策提言は重く受け止めている。このようなことに取り組んできたこともあり、政策提言機能は進化もしてきたし、大きく前進してきたと思います。

課題は、チェック機能の部分だと思っています。それは、先ほど言ったような義務枠補助金付けの行政の中で、ハードルの高いところもあったが、もっと高めていかなければならない。

 

 第1回は、金子さんが目指した県議会のあるべき姿やその取組内容、そして、まだまだ道半ばである県議会改革に向けての課題などについてお伺いしたことを掲載しました。

 第2回は、県議会議員の選出基盤としての選挙区の望ましい姿や監視機能を高めるための方法、また分権型自治の最終章に位置づけられている道州制について掲載いたします。

 

(第2回に続く)

 

編集スタッフ

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