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コラム

『昭和をあじわう-ある音楽番組に誘われて-』3

2019.3.3
執筆者:宮島孝男

 アナログレコードが人気だ。2018年1月には、国内でもソニーが約29ぶりにレコード生産を復活させている。 

 2016年4月8日、新宿ディスクユニオンで歌謡曲のレコードを探す若者や海外から購入にやってきた外国人等を取り上げたNHKの『ドキュメント72時間』が放映された。2018年3月23日にも再放送されたそうだが、残念なことに見逃してしまった。

 私が遠山明男さんと会うきっかけともなったKTS『プライムニュース』「木曜フォーカス」の1コーナー「名盤をあじわう」誕生の背景の一つには、この番組の存在があった。

 遠山さんに今度は「名盤をあじわう」について聞いてみた。

 2017年11月30日スタート、ほぼ2ヶ月に1回の放送である。名盤(アルバム)の紹介に始まり、時代背景、制作スタッフ、エピソードなど交えながら、2曲が流れる。後半では名盤が発売された当時の鹿児島の動きが紹介される。

 これまで取り上げられた名盤は、第1回目の長渕剛『風は南から』から直近(2019年1月24日)のクィーン『オペラ座の夜』まで計9枚。特別編として、第5回目の2018年7月5日には、築地俊造を取り上げた。FM鹿児島『わが人生、島唄にあり~俊造あにぃの遺言~』が第55回ギャラクシー賞選奨を受賞したことによる。

 クィーンといえば、映画『ボヘミアン・ラプソディ』が大ヒットしている。世代でない若い人たちが飛びついている。遠山さんは3回見たそうだ。

 なぜ大ヒットしてるのか、①豊かな音楽性、②フレディ・マーキュリー(同性愛者)の生き方…LGBTの認識が高まってきて特別視しなくなった、③厳格な官僚であった父との関係性(葛藤と克服)と分析してみせた。

 そして今後取り上げたい名盤として、サイモン&ガーファンクル『明日に架ける橋』、山下達郎『GREATEST HITS! OF TATSURO YAMASHITA』、『USA for AFRICA』、吉田拓郎『元気です』など挙げた。

 FM鹿児島を辞すると、私は中古レコード・CDショップ・MOCKING BIRDへ向かった。再開発のため昨年中央駅から天文館の現在地に移転した。もともとのMOCKING BIRDの始まりはグルメ通りだったので、近くに戻って来たといえるかもしれない。

 代表の鹿倉得蔵さんは大のカントリーファンで、全国でも有名になっている「カントリーフェスタ」を鹿児島で30年続けている。また1995年~2001年には、ツアーリーダーとなって「カントリーミュージックの旅」を企画、アメリカを幾度か訪問している。鹿倉さんにいわせると、カントリーは「日本の歌謡曲」なんだそうである。そんな鹿倉さんに、レコードの魅力など聞いた。

 「レコードとは時間を共有します。そこに寄り添っている。掛け流しにはできません。その時間はとりことなります。音楽の世界が拡がります」

 「ジャケットが素晴らしい。ビジュアルだし。しげしげと眺めてみる。ジャケットで買う人もいますから。CDは味気ないです。またジャケットには歌詞(洋盤は日本語訳も)があり、解説もある、曲の理解が深まります」

 「レコードからはα波が出るとか。森林浴で精神的な安らぎが得られるように人間の5感が癒されるんです」

 「売れてるレコードはまずジャズですね。ジョン・コルトレーン、マイルス・デイヴィス、デイブ・ブルーベック、ソニー・ロリンズといったビッグネーム。ジャズはアナログで聴く人が多い。オーディオもいいのを持っていますし。それからロック。ビートルズは言うまでもないですが、イーグルス『ホテル・カリフォルニア』、キャロル・キング『つづれおり』、マイケル・ジャクソン『スリラー』といった永遠の名盤。今話題のクィーンもすぐ売り切れました。在庫なしです。クラシックは売れません」

 「昭和の日本歌謡では、美空ひばり、ちあきなおみ、園まりとかでしょうか。鹿児島では、やはり長渕剛、吉田拓郎。変わったところでは『南国情話』、『おはら節』とか」

 「客層としてはおじさんはもちろんですが、若者・女性も結構多いですよ。買うものもだいたい一緒。情報を仕入れて来ますね。CDは持っているが、レコードでも聴いてみたいという人もいます。後から『全然違いますね』と言ってきました」

 「『観た映画の中でレコードをかけていた。レコードに触れてみたかった。タワーレコードや十字屋は敷居が高いので』とまずうちへ取っ掛かりにやって来ますね。生まれて初めてだから、どう針を落とすかも教えてあげるんです」

 なるほど。帰路、私は次の文章を思い出していた。

 「私とアダムは、棚に並んだアルバムの背表紙を見ながら曲を選び、ジャケットのデザインをじっくりと吟味した。それからレコードをターンテーブルに置いて、そろそろと注意深く針を落とした。針がビニールの表面に触れ、一秒間の静寂ののち、最初のチリチリという音の波がスピーカーから聞こえてくる。どれもハードディスク・ドライブで再生するより身体を使う行為であり、手、足、目、耳だけでなく、レコードの表面の埃を吹くために口も必要とした。レコードをかけるという経験には、数値では測れない豊かさがあった。効率が悪いからこそ、楽しみも大きかったのだ。これはアナログならではの醍醐味だな、とアダムは言った」(デイビッド・サックス『アナログの逆襲』より)

 不思議に遠山さんや彼の番組とのご縁ができてから、アンテナを張っているせいでもあろうが、昭和を聴く・観る・読む、いわゆる「昭和をあじわう」時間が増えてきつつある。

 2月8日にはNHK福岡放送局制作『実感ドドド』「美空ひばり最後の足跡 加藤登紀子がたどる」を視聴した。目を奪われてテレビの前に釘付けになった。

 30年前の1989年2月7日、北九州市小倉区の九州厚生年金会館での公演が生涯最後のステージとなった。それは、約2年前ひばりが済生会福岡総合病院に入院していた時に福岡市民から受けた温かい激励への恩返しであった。

 『本田靖春集第3巻 戦後ー美空ひばりとその時代』を読み始めた。「美空ひばりは1987(昭和62)年5月29日、済生会福岡総合病院の特別室で50回目の誕生日を迎えた」で始まる。

 なかにし礼の近著に『芸能の不思議な力』がある。帯には黒柳徹子が「芸能と平和が狂おしいほど一心同体であることを願っている、優しいなかにしさんの本。面白くて一気に読んだ。涙も出た。おすすめしたい!」と寄せている。 第1章の「わが畏敬せる美空ひばり」が凄い。私は初めてにして第一級の美空ひばり讃歌に出会えたように思った。そういえば、鹿倉さんも「美空ひばりは、とにかく歌詞がすうっと頭に入ってきますよね」と言っていた。

 2月11日には、NHKFM『今日は一日松本隆ソング三昧』(特番9時間)を聴いた。

 これまでこつこつ集めてきた「昭和コレクション」もいよいよ出番かと今にも書棚から飛び出しそうだ。阿久悠、松本隆、加藤登紀子、きたやまおさむ、なかにし礼、久世光彦、向田邦子、永六輔、小沢昭一… 

 

 「歌のないこの世を想像してみたまえ。なんという殺伐たる風景だろう」(なかにし礼)

宮島孝男

宮島孝男

1954年 鹿児島県生まれ。
1973年 鶴丸高校卒業、1979年、九州大学文学部卒業(社会学専攻)
 同年   MBC南日本放送入社。企画部長・マーケティング担当部長や鹿児島総合研究所の企画研究部長・地域政策部長等を歴任
2007年 鹿児島県議会議員(1期)
2013~2016年度 志學館大学非常勤講師
2019年 ㈱言論鹿児島 シニアフェロー・記者

これまで、県・市町村やJA・商工会等の各種プランを策定、南のふるさとづくりコーディネーター・アドバイザー、県・市町村の審議会・行政評価委員会等の委員、自治研修センター・鹿児島市生涯学習プラザ等の講師を務める。講演多数。
2011年から著書の出版、新聞・雑誌等への投稿・寄稿など本格的に執筆活動を行っている。
2019年から「鹿児島ウォッチャー」に論説、コラム、ルポ、随筆など執筆を始める。

【著書】
・『ウォッチ!県議会 県議って何だ!?』(南日本新聞開発センター)
・『こげんする!鹿児島-鹿児島地域づくり実践編-』(南方新社)
・『どげんする?鹿児島-鹿児島地域づくり戦略論-』(南方新社)
                                
2016年から南日本新聞「時論」等に投稿中
「第24回随筆春秋コンクール」(2018年)で奨励賞受賞

趣味は読む、書く、歩く、たまの登山

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