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時論・創論

『年始の新聞を読んで』2

2019.1.21
執筆者:宮島孝男

 ここからは、日本の政治や安部政権について、元日をはじめ年始の新聞、私が読んだ著書など参考に論述していきたい。

 まず安部首相の年頭所感である。扱いの大きい順に。

産経…『日本、世界の真ん中で輝く年に』の見出しで、「天皇陛下の代替わりを踏まえ『平成の、その先の時代に向かって“日本の明日を切り拓く”一年とする』との要約のもと全文を掲載。『建設的な議論期待』『参院選積極参加を』衆参両院議長の年頭所感も併せて掲載している。

読売…『日本の明日 拓く』『首相 社保「全世代型」を強調』(以下、見出しのみ)

朝日…『少子高齢化対策 意欲』

毎日…『戦後日本外交 総決算進める』。後段で衆院議長の年頭所感にも触れている。

日経…『平成の先の時代切り開く先頭に』

南日本(共同)…『日本の明日切り開く』

 〔首相の表明文は「切り拓く」だが、日経と共同はそのままではなく「切り開く」と表記している。こういう事例もあり得るのだとちょっとした発見者気分に〕

 なお共同は併せて衆院議長所感も掲載。『国会改革へ全力尽くす』の見出しのもと、「行政府による決済文書改ざんや国会への不適切データ提示を巡り『極めて残念なこと』と言及。再発防止や国会、国民への説明責任を果たしていくよう行政府に求めた」と報じている。“民主主義の危機・崩壊”がいわれる中まったくこのことに尽きるわけで、政府には誠実・謙虚かつ真摯に、今年からはその言葉通り向き合ってもらいたい。

 年頭所感という性格からかも知れないが、首相の方からは行政運営や国会対応等に対して反省の弁のひとかけらもない。

 また安部首相は、国会答弁・会見・インタビューで「しっかりと」の言葉を口癖のように発していた(年末は連発していたように思う)。いいかげん鼻に付くというか虚しい気持ちに襲われたのは私だけではあるまい。言動不一致はもう懲り懲りである。

 私事で恐縮だが、民主党政権下で自民党が下野中であった県議時代、同級生でもある安部さんからお手紙をいただいたことがある。以来返り咲きも果たした首相にエールを送り続けてきたが、さすがにここ2~3年その思いも萎えてきた。 

 さて、朝日や南日本(共同)のように元日の社説で政治のあり方、安部政権の政治姿勢など論じていた社もあったが、ここで改めてわが国の政治の現況と課題を整理してみよう。

1.「強すぎる官邸(横暴、独善的)」、その抑止

①熟議を放棄した法案の採決強行

②国会と国民を欺く公文書改ざん

③政治責任の軽視

④民意を無視した沖縄・辺野古の海への土砂投入等々

いわゆる「長期政権のおごり」にも起因するもの。

  • 弱すぎる野党の問題
  • 国会改革
  • 小選挙区の見直し 

 1に関しては、これに見事に呼応するかのような意見が元日の朝日新聞「声」欄にあった。「一国のリーダーやそれを目指す政治家は、大事なことは数の力で押し通さずに議論を尽くす人、不正は不正として許さない公正な人、民の痛みが分かる人であってほしい」

 2に関しても、同「声」欄に「与野党伯仲の選択こそ、独裁・強権政治を許さない唯一の方策であると確信している」とあった。我が意を得たり、ともにまさにその通りである。

 そういえば、あの橋下徹氏が「強い野党がなければ、この国は腐る」として『政権奪取論 強い野党の作り方』(朝日新書)を昨秋上梓している。経験を踏まえたなかなか刺激的で読み応えのある著書であった。

 3.4はできるところから小さなことでも着実に進めていくことだろう。

 1の②③に関する著書といえば、昨年末発刊された相澤冬樹『安部官邸 vs. NHK』(文藝春秋)を挙げねばなるまい。いわゆる森友モノの中では圧巻であった。本の表紙には「森友事件をスクープした私が辞めた理由」、帯には「なぜ放送されないんだ!『森友事件』の原稿から、消される『安部官邸とのつながり』。NHKでも検察でも東京 vs. 大阪のせめぎ合いが続く中、特ダネをつかんだ記者が異動を命じられた!政権を揺るがす疑惑と巨大組織内に強まる圧力-その狭間で最後まで戦い続けた男の渾身のノンフィクション」とある。ベストセラー入りしているのも、国民の関心が未だに高い証拠であろう。

 「急転直下の検察捜査、財務省は全員不起訴~そして私は記者を外された~」(第14章見出し)

 「森友事件とは、実は森友学園の事件ではない。国と大阪府の事件だ。おかしなことをし責任があるのは、国と大阪府なのだ。なぜ国有地は格安販売されたのか?国有地を売ったのは森友学園に小学校を作らせるためで、国と無理やり認可しようとした大阪府は、なぜそこまでして、この小学校を設立させたかったのか?この謎を解明しないと、森友事件は終わったことにならない。私がNHKを辞めた最大の目的は、この謎を解明することだ。森友事件は私の人生を変えた。何のしがらみもないというこの大阪日日新聞で、私は森友事件の取材を続ける。謎が解明されるまで」(終章を抜粋要約)

 政権とメディア上層部の度重なる会食や報道自粛の忖度など問題があることは承知していたが、「メディアに関する世論調査」等で信頼度NO.1、事件報道の水準が極めて高いとされるNHKテレビが忖度報道とは。

 森友事件は加計学園問題と共にまさに現安部政権のあり様を象徴する出来事である。森友事件をうやむやのままで終わらせてはならない、風化させてはならない。解明なくばそれは民主主義の死を意味するといっても過言ではなかろう。相澤氏のさらなる力戦奮闘を期待したい。

 思えば、2016年3月末をもって、NHK「クローズアップ現代」、TBS「ニュース」、テレビ朝日「報道ステーション」のメインキャスター(国谷佑子、岸井成格、古舘伊知郎の各氏)が番組から降板した。日本のテレビ放送史上、デイリーの報道番組のメインキャスターが3人同時期に降板した例はこれまでない(TBS「報道特集」キャスター金平茂紀)。1年前の2015年3月末には「ニュースウォッチ9」のキャスター大越健介氏も降板している。

 特に顕著なトランプ大統領、そして安部首相のメディアへの敵意。これまでみてきたように、安部政権に関しては、政権と近く擁護的なメディア vs. 政権と距離を置く批判的なメディアの構図も明らかだ。権力とメディアのあり方がこんにちほど問われている時代はない。メディアは、権力を監視・チェックするジャーナリズム本来の役割を確実に果たしてほしい。

 終わりも著書の話である。年末書棚を整理していたら、ある本が目に止まった。日経の花形記者であった田勢康弘氏の『ジャーナリズムの作法』。20年前に書かれた本だが、「第8章指導者のこと」を読み返してみて、全くこんにちの指導者が当時と何ら変わっていないことに驚かされた。どうやらわが国の指導者はこの20年間成長と進歩をほとんど遂げていないようなのだ。

 「指導者の劣化現象」「人の上に立つ者が怜悧でない国」「幼稚園児の遊戯のよう」「『強力なリーダー』など望むべくもない」(これは少しはマシになった?)「悪質な政治家をいかに排すか」「『気骨ある異端』を遠ざけるな」これら小見出しを見るに、読者も同感であろう。

 このような政治家・指導者を選んだのは、他ならぬ我々国民自身である。次の3で今年の参院選・統一選を取り上げるが、我々は心眼と高い見識を持って投票に臨まねばならない。

宮島孝男

宮島孝男

1954年 鹿児島県生まれ。
1973年 鶴丸高校卒業、1979年、九州大学文学部卒業(社会学専攻)
 同年   MBC南日本放送入社。企画部長・マーケティング担当部長や鹿児島総合研究所の企画研究部長・地域政策部長等を歴任
2007年 鹿児島県議会議員(1期)
2013~2016年度 志學館大学非常勤講師
2019年 ㈱言論鹿児島 シニアフェロー・記者

これまで、県・市町村やJA・商工会等の各種プランを策定、南のふるさとづくりコーディネーター・アドバイザー、県・市町村の審議会・行政評価委員会等の委員、自治研修センター・鹿児島市生涯学習プラザ等の講師を務める。講演多数。
2011年から著書の出版、新聞・雑誌等への投稿・寄稿など本格的に執筆活動を行っている。
2019年から「鹿児島ウォッチャー」に論説、コラム、ルポ、随筆など執筆を始める。

【著書】
・『ウォッチ!県議会 県議って何だ!?』(南日本新聞開発センター)
・『こげんする!鹿児島-鹿児島地域づくり実践編-』(南方新社)
・『どげんする?鹿児島-鹿児島地域づくり戦略論-』(南方新社)
                                
2016年から南日本新聞「時論」等に投稿中
「第24回随筆春秋コンクール」(2018年)で奨励賞受賞

趣味は読む、書く、歩く、たまの登山

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