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時論・創論

『年始の新聞を読んで』1

2019.1.21
執筆者:宮島孝男

 新聞が読まれなくなったが、新聞の良さは「信頼性のある情報」「質の高い洗練された記事」そして論説等の「深み」にある。そこで私は、各紙が元日にどのような記事を掲載し論を貼っているのか読売・朝日・毎日・日経・産経(発行部数順)の全国紙と地元紙南日本の6新聞に目を通してみた。

 まずは社説から。社説には各新聞社の意見、主張・見解が述べられている。読売・産経が保守で、朝日・毎日がリベラルというのはよく知られるところだ。

 各紙の見出しと概要を掲げる。

 

読売(拡大版)…『米中対立の試練に立ち向かえ』『新時代に適した財政・社会保障に』の見出しのもと、トランプ外交への懸念から「自由貿易の網を広げるなど多国間強調の再生を図れ」、対中国では、「長期的視点と一貫性が不可欠」「中国に強権的な拡張路線はこのままでは行き詰ることを知らしめ、国際的ルールの順守と、日米欧との真の共存共栄を受け入れさせよ」と説く。そして、国民の抱く平成時代の印象「不安定」と「停滞」という後ろ向きの気持ちや将来不安をどう払拭するのか。「財政と金融の現状を直視し、夏の参院選で与野党は具体策を示せ」と結んでいる。

 

朝日…『政治改革30年の先に 権力のありかを問い直す』の見出しのもと、小選挙区制は失敗?と問い、「一からやり直す余裕がないとすれば、必要なバージョンアップを地道に進めていくしかない」、そして「弱い国会を強くせよ」と説き、「解散権の行使再考」も促す。結びは「政治に緊張感を持たせる最良の手段は、主権者たる国民が厳しい視線を絶やさないことだ」としている。

 

毎日…『次の扉へ AIと民主主義』『メカニズムの違いを知る』の見出しのもと、「民主主義の価値は試行錯誤を重ねるプロセスにある。人間は一人ひとり違うからこそ、対話を続けて集団の共感を維持しようとする。処理の速さと分類を得意とするAIとは根本的なメカニズムが異なる」とし、「リアルな肌触りの必要性」を強調する。「議論をする。互いを認め合う。結論を受け入れる。リアルな肌触りを省いたら民主主義は後退する」と。

 

日経…『不確実性にたじろがず改革進めよ』の見出しのもと、世界がめまぐるしい変化の渦中にある中で、「G20で国際協調を守れ」「中間層の安定を生かせ」と説き、「不確実性をはらむ年だが、たじろがず、政府も企業も改革に全力を尽くそう」と結んでいる。また、「資本主義や民主主義の疲弊が海外で目立つが、日本はこのふたつの価値を守り、米中などに働きかける責任がある。それが国際協調の復権をもたらし、日本の活路を開くことにつながる」とも主張。

 

産経(1月3日に掲載)…『御代替わり 感謝と敬愛で寿ぎたい 皇統の男系継承確かなものに』の見出しのもと、「初めて譲位を目の当たりにする経験は、国民それぞれが天皇、皇室のことを改めて知り、考える貴重な機会になる」と指摘、「新天皇が国家国民の安寧や五穀豊穣を祈る大嘗祭は、天皇の本質を損なうゆえ一部に議論があるような天皇の私事として行ってはならない」と説く。かつ、「確かな皇位継承を保つこと、男系による継承」を主張し、悠仁さまのご教育の問題まで触れている。まさに産経らしい社説と言えよう。

 

南日本…『他者を慈しむ心次代へ』の見出しのもと、企業は本分をおろそかにしてはいないか、「モノづくりの国の誇りを取り戻せ」、国や政治については、「都合の悪い話にはふたをしたままやり過ごし、国民の懸念や疑問は置き去りにする。そんな政治がまかり通っている(具体的に例を挙げなくとも、読者の皆さんには十分お分かりであろう)。聞く耳を持たない政治が幅を利かせば、意に沿わない他者を軽視したり排除したりすることを社会も是認しかねない。政治の責任は重い」と警鐘を鳴らす。そして「他者を慈しみ、境遇や立場、心の痛みを思いやる心は日本各地で育まれてきた共同体の基盤になっていたはずだ。その基盤が危うくなったままの社会を次の世代に引き継ぐわけにはいかない」と結んでいる。なお、これは共同通信社の社説であり、地元紙としての社説は1月3日となる。3で取り上げる。

 

 次にコラムを見てみよう。

編集手帳(読売)…詩人・石垣りんさんの『新年の食卓』という作品を引き合いに、「春に新元号を迎える年の初めに感謝をしるすものである。次の時代はどんな波が寄せ来るだろう」と結んでいる。

 

天声人語(朝日)…「人類は一歩一歩、暴力を減らしてきた(米国の認知科学者スティーブン・ピンカー氏)。止めてはいけない流れである」と説き、「多くの国が20世紀から引き継ぎ、育ててきたことがある。自由にものが言えること。誰もが教育を受けられること。国と国の垣根を低くしていくこと…。これからも世界が前へ進むための礎であろう」と結んでいる。

 

余禄(毎日)…「平成の月日を振り返りつつ、次の時代に思いをめぐらす…今までの歴史には一度もないお正月を迎えた日本列島である」とし、「次の何十年か、私たちは平和を守り、世界を今より少しでも良いものにできるだろうか。人口減少に応じた新たな文明を創り出し、社会の活力と品位を保てるのだろうか。後を継ぐ者に、良いもの、大切な価値を引き継げるだろうか。いつものお正月よりも視線がちょっと遠くへと向かうのは、なにも改元のおかげというばかりでもなさそうだ。おりしも今、私たちが抱える課題がより広い文明的視野を必要としているからに違いない」と結んでいる。

 

産經抄(産経)…「われわれは、今年5月に改元され、新しい御代を迎える。とはいえ、世界は激動の最中にある。天地がひっくり返るような出来事が、いつ起こってもおかしくない」とし、「どんな変革の波が押し寄せようと、時に大きな犠牲を払いながらも、したたかに乗り越えてきた。そんな先人のたくましさを今こそ、見習いたい」と結んでいる。

 

春秋(日経)…「米国と中国の貿易戦争、摩擦が長引けば、市場は動揺し、生活へ今以上の影が差そう」とし、「47年前の急転直下の仲直りのような事態も期待させる。しかし、次世代のハイテク覇権をかけた争い、先はなかなか見通しにくい。2つの国の人だけでなく、他国の市民をも安堵させてくれるお年玉がほしい」と結んでいる。日経らしいコラムだ。

 

南風録(南日本)…「『天皇としての旅を終えようとしている』。天皇陛下が昨年末の記者会見で語られた言葉が胸に去来する」とし、「『平成』があと4カ月で幕を下ろす。改元は社会の空気や人々の心持ちを新たにする力を持とう。一人一人が歴史の重みをかみしめる。より良い社会の在り方に思いをはせ、それぞれの旅を続けていきたい」と結んでいる。

 

 終わりは、特に目に止まったその他の論説とスクープ(特種)に触れたい。

毎日(論説)…『未来へつなぐ責任』の見出しのもと、「18世紀のフランス革命前、ルイ15世の愛人として権力をふるい、浪費の限りを尽くしたポンパドール夫人は『わがなきあとに洪水はきたれ』と言ったとされる。『いまさえよければ』が破滅を招いたのである」とし、「日本で今年生まれる赤ちゃんの半分以上は、22世紀の世界を見るだろう。私たちには、世代を超えた重い責任がある。『あとは野となれ山となれ』というわけにはいかないのだ」と結んでいる。

 

産経(論説)…『さらば、「敗北」の時代よ』の見出しのもと、「平成の30年間で世界全体に占める日本のGDPは15%から6%まで大きく後退した、30年前、世界の上位50社(時価総額)中、日本企業は32社を占めていたが、今やトヨタ1社のみである、人口も10年前をピークに減り続け、増えているのは国債という名の借金のヤマだけである」と指摘し、その敗因として、①焼け跡からの奇跡の経済復興に慢心、②首相が18人を数えるほど政治が混迷、③中国の共産党独裁体制を支援の3つを挙げている。ことに③は取り返しのつかない失策であるとし、「誤った歴史認識に引きずられることなく、冷徹に自国の利益を何よりも優先した決断をしなければ将来に大きな禍根を残す、という教訓を歴史からくみ取ることしかない」と説き、「日米安保さえあれば大丈夫だ、という思考停止の時代はまもなく終わりを告げる。この国自らが厳しい選択をその都度迫られる新しき時代こそ、日本人は戦後の呪縛から解き放たれる、と信じたい」と結んでいる。誠に産経らしい。それにしても、数字が冷酷に物語る平成日本の「敗北」はなんとも痛々しい。

 

朝日(スクープ)…見出しのみ記す。『昭和天皇 直筆原稿見つかる』『晩年の歌252首 推敲の跡も』、『激動の半生 歌に刻む』、『昭和天皇 平和や家族思い』、『生の気持ち 推し量れる』(作家・半藤一利さんのコメント)。昭和天皇の和歌の相談役だった岡野弘彦さんのお話のように、昭和史の核であった方の気持ちが表現されており、誰でも読めるように整理して発表してほしいものだ。

 

読売(スクープ)…同じく見出しのみ。『双葉山激励 名優の手紙』『連勝ストップの翌日』、『六代目菊五郎「斯道に邁進を」』、『縁が育てた横綱の品格』、『文化人らと交流多彩』。私は大の大相撲ファンであり、かつて『イマダモツケイニオヨバズ-双葉山と相撲求道-』と題して「随筆かごしま」(平成23年廃刊)に連載していただけに大変興味深く読んだ。現代の横綱には考えられないエピソードである。なお、南日本新聞の『「土俵外」見聞録』でお馴染みのキンボシ西田さんともいずれ相撲談義に花を咲かせてみたいと思っている。

宮島孝男

宮島孝男

1954年 鹿児島県生まれ。
1973年 鶴丸高校卒業、1979年、九州大学文学部卒業(社会学専攻)
 同年   MBC南日本放送入社。企画部長・マーケティング担当部長や鹿児島総合研究所の企画研究部長・地域政策部長等を歴任
2007年 鹿児島県議会議員(1期)
2013~2016年度 志學館大学非常勤講師
2019年 ㈱言論鹿児島 シニア・フェロー

これまで、県・市町村やJA・商工会等の各種プランを策定、南のふるさとづくりコーディネーター・アドバイザー、県・市町村の審議会・行政評価委員会等の委員、自治研修センター・鹿児島市生涯学習プラザ等の講師を務める。講演多数。
2011年から著書の出版、新聞・雑誌等への投稿・寄稿など本格的に執筆活動を行っている。
2019年から「鹿児島ウォッチャー」に論説、コラム、エッセイなど執筆を始める。

【著書】
・『ウォッチ!県議会 県議って何だ!?』(南日本新聞開発センター)
・『こげんする!鹿児島-鹿児島地域づくり実践編-』(南方新社)
・『どげんする?鹿児島-鹿児島地域づくり戦略論-』(南方新社)

【執筆歴】
・「月刊ずいひつ」(日本随筆家協会)
・「随筆かごしま」
※「月刊ずいひつ」と「随筆かごしま」は休刊中
・南日本新聞「時論」

【受賞歴】
「第24回随筆春秋コンクール」(2018年)奨励賞受賞

趣味は読む、書く、歩く、たまの登山

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